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ウェアラブル向けマイコンの進化に必要な2つの要素、きっちり応える欧米中製品分解で探るアジアの新トレンド(43)(2/3 ページ)

» 2019年10月30日 09時30分 公開

ほぼどれもが2基のCPUを持つ

 図2は、2019年5月に発売になったHuaweiのスマートウォッチ「HUAWEI Watch GT」である。こちらもHUAWEI Band 3と同じく、AmbiqのApollo3が採用されている。リストバンド型のHUAWEI Band 3に比べ、腕時計型のHUAWEI Watch GTは体積が大きいので、NFCコントローラーやGPS機能チップ、ディスプレイ表示用のコントローラーを、リストバンド型(HUAWEI Band 3)に追加する形で搭載している。

図2:「HUAWEI Watch GT」の外観と基板 出典:テカナリエレポート(クリックで拡大)

 内蔵するストレージメモリも128MBと大きい。具体的には、Arm Cortex-M4内蔵のApollo3に加え、同じくCortex-M4と「Cortex-M0」を用いるBroadcom「BCM47752」、Cortex-M4搭載のSTMicroelectronicsのマイコン「STM32L4R」と、Armコアが4基も搭載されている。センサーデータの機械学習(心拍の計測)、ディスプレイの多彩な表示、位置情報の正確な管理などをおのおのが行っているわけだ。今やウェアラブル機器にもCPUが複数個搭載される時代ということになる。

 先にウェアラブルの第2世代では通信とマイコンが統合され、通信マイコンになったといったが、第3世代ではCPUが1個から2個、4個へと拡張されている。

 「Apple Watch Series 4」「Apple Watch Series 5」で採用されるプロセッサはデュアルCPUだ。さらにGPSなどにもCPUが存在するので、3個以上で構成されている。Samsungのスマートウォッチシリーズでは「Exynos 9110」という10nmプロセスを用いたプロセッサが採用され、こちらも、デュアルコアのArm「Cortex-A53」が搭載されている。腕時計タイプの第3世代スマートウォッチでは、ほぼどれもが2基のCPUを持つわけだ。

 図3は、中国Xiaomiの2019年6月発売のリストバンド型ウェアラブル機器「Xiaomi Mi Band 4」である。こちらは第4世代だ。内部には英Dialog Semiconductor(以下、Dialog)の通信マイコン、「DA14697」が採用されている。

図3:「Xiaomi Mi Band 4」の外観と基板 出典:テカナリエレポート(クリックで拡大)

 DialogはAppleのほぼ全機種の電源ICを設計開発する電源系アナログメーカーとの認識が高いが、2014年以降、Bluetooth通信機能を持った通信マイコンを手掛けており、こちらも多くの製品に採用されている。電源ICメーカーとしての地位は依然高いが、AppleがDialogのPMIC(パワーマネジメント)事業を買収したり、Appleが自前で電源ICを設計開発したりするようになったので、Dialogは通信マイコンの強化に力を入れているようだ(Appleは、2018年の「iPhone XS Max」でApple製電源ICを採用、2019年に発売した「iPhone 11」シリーズでは全機種にApple製電源ICを採用している)。

 Xiaomi Mi Band 4で採用される通信マイコンは2基のCPUを持つ。Arm Cotex-M4と「Cortex-M0+」だ。前者はシステム制御や表示などをコントロールし、後者はセンサー制御を行う。Bluetooth 5.0も1チップ化されている。ほぼAmbiqのApolloと同等機能を持つチップとなっている。

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