PCM(相変化メモリ)は2019年の初めに、注目すべき3つの新しいメモリ技術の一つとして取り上げられた。その主な理由は、Intelが「3D XPoint」メモリ(PCMであることが明らかになっている)を「Optane」ブランドで本格的に展開し始めたからだろう。では、3D XPoint以外のPCMについてはどうだろうか。
PCM(相変化メモリ)は2019年の初めに、注目すべき3つの新しいメモリ技術の一つとして取り上げられた。その主な理由は、Intelが「3D XPoint」メモリ(PCMであることが明らかになっている*))を「Optane」ブランドで本格的に展開し始めたからだろう。では、3D XPoint以外のPCMについてはどうだろうか。
*)3D XPointがPCMであると公式に発表されたわけではないが、チップ分析などにより、PCMであることが明らかになっている。
米国の調査会社であるObjective AnalysisとCoughlin Associatesの2019年度の年次報告書「Emerging Memories Ramp Up(新興メモリの成長)」は、3D XPointの売上高(Optaneという形での売上高)は2029年までに160億米ドルに成長すると予測している。主な成長要因は、価格がDRAMより安価であることだという。だが、IntelとMicron Technology(以下、Micron)が共同開発した3D XPoint以外にも、PCMの可能性の実現に向けた研究は進められている。
新興メモリとしてのPCMの歴史は長い。だが、同技術の研究が軌道に乗ったのはここ10年ほどのことだ。半導体市場調査会社のObjective Analysisで主席アナリストを務めるJim Handy氏は、「同技術が将来性を期待され続けている理由は、超小型クロスポイントセルを積層できる点にある。Intelの3D XPointは現在2層構造だが、次世代バージョンでは4層構造にすることを明らかにしている。層を増やすことで低コスト化を図る考えだ」と述べている。
だが、多くの研究開発が行われているにもかかわらず、3D Xpoint以外に関しては、Handy氏の知る限り商用化されたPCMはないという。Micronは最近、3D XPointをベースにした新ファミリーの第1弾となる製品「X100 NVMe SSD」を発表した。
Handy氏は、「どの新興メモリもそれぞれ優れた点があるように、PCMにも独自の利点がある。MRAM(磁気抵抗メモリ)陣営に言わせれば、『MRAMは求められる機能を全て備えているが、PCMはそうではない』ということになるだろうが、その逆もしかりだ」と話す。「問題は、ある特定のデバイスに十分な市場があるのか、そのデバイスは新たな市場を創造することができるのかということだ。ほとんどの場合、そうはいかない。PCMの活用が期待される分野の1つは、ニューラルネットワークの構築だが、同分野にはReRAM(抵抗変化メモリ)など他の技術も注目している」(Handy氏)
IBM Researchは、PCMの可能性に期待している。スイス・チューリッヒのIBM Researchでクラウドストレージ/クラウドアナリティクスグループを率いるHaris Pozidis氏は、「過去数年にわたって、マルチビットストレージの実現に注力してきた。マルチビットストレージは、セル当たりのビット数を増やすことでコストを削減する唯一の方法である」と述べている。
IBM Research の研究では、より高速なデバイスを使用した場合の影響をよく理解するために、IntelのOptane SSDによるワークロードの実行も試してみたという。Pozidis氏は、「長く待ち望まれていたDIMMがリリースされたことで、この種の不揮発性メモリにデータベース全体を保存できる可能性に関心が集まっている。永続的なメモリ機能を活用するようにファイルシステムを設計すれば、性能上のメリットは非常に大きい」と述べている。
Pozidis氏は、「現在、より多くの製品化が進んでいるのはMRAMだが」と前置きしつつ、「PCMでは半導体製造技術を微細化できるという点が、MRAMと比較した際の最も魅力的な特長の一つだ」と述べる。「MRAMのメモリセルの面積は、PCMに比べて約10倍だ。つまり、PCMは、同じバイトサイズでセル数を大幅に減らすことができる。ReRAMも微細化できる技術ではあるが、PCRAMほど成熟していない。ReRAMは依然として投資を誘う魅力はあるが、PCMにはより即時的なメリットがある」(Pozidis氏)
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