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中国で誕生したDRAMメーカー、ChangXinの野心JHICCの“二の舞”は避けたい(1/2 ページ)

ChangXin Memory(以下、ChangXin)は、「中国で唯一のDRAMメーカー」として自社の独自性を公式に主張している。中国は、Yangtze Memory Technology(YMTC)が進めるNAND型フラッシュメモリの製造とGigaDeviceが設計するNOR型フラッシュメモリに加え、国産のメモリデバイスの製造計画を誇っているが、こうした成果よりもさらに大きな野心を抱いている。

» 2019年12月09日 13時00分 公開
[Junko YoshidaEE Times]

中国に誕生した“唯一の”DRAMメーカー

 ChangXin Memory(以下、ChangXin)は、「中国で唯一のDRAMメーカー」として自社の独自性を公式に主張している。

 中国は、Yangtze Memory Technology(YMTC)が進めるNAND型フラッシュメモリの製造とGigaDeviceが設計するNOR型フラッシュメモリに加え、国産のメモリデバイスの製造計画を誇っているが、こうした成果よりもさらに大きな野心を抱いている。

 DRAMの製造は半導体に関する中国の野望の実現に向けた大きな一歩になるが、中国がDRAMを供給できるかどうかについては、業界の意見は分かれている。たとえ供給できるとしても、相応量の商用DRAMの出荷を開始できるまでどれくらいの期間を要するのかは疑問だ。

 だが、驚くことに、ChangXinは既に供給を開始していると主張している。

ChangXinの工場。このほど、R&DとFab1が完成した 出典:ChangXin Memory(クリックで拡大)

 ChangXin Memory(旧Innotron Memory)の代表はEE Timesの独占インタビューで、「安徽省の首都である合肥のFab 1と研究開発施設が完成し、現在、月産2万枚のウエハーを生産している」と述べた。2020年第2四半期には、その2倍となる4万枚に増やす計画だという。同社は2019年秋に、19nmプロセス技術を適用して、8GビットのLPDDR4の生産を開始している。

 ChangXinは、コモディティDRAM市場でSamsung ElectronicsやSK hynix、 Micron Technologyなどの世界的メモリ大手に真っ向から挑む代わりに、スペシャリティDRAMの生産を追求する道を選択した。

 これまで中国のDRAMベンダーの事業は、失速または消滅してきた。さらに、Tsinghua UniGroupは当初、南京と成都でDRAMを生産する計画だったが、その計画に乗じて地価が不当に吊り上げられた。こうした背景を考えると、ChangXinが中国で供給可能なDRAMメーカーとして誕生したことは注目に値する。

 ChangXinがDRAMの生産を計画する中国の他のメーカーと違うのは、ChangXinが単に計画を語っているだけではないという事実だ。同社は実際に工場を建設し(さらに2つの工場を増設する計画)、それと同時に3000人もの従業員とその家族が生活するためのインフラを合肥に構築した。

 ChangXinは2016年に合肥産業投資ファンドとGigaDeviceによって設立され、GigaDeviceの前社長であるYiming Zhu氏が経営している。同社にはDRAMに関する技術的な功績はない。

 また、ChangXinはTsinghua UniGroupとの関係もない。

ChangXinが抱える課題とは

 これまでDRAM市場への中国の参入が困難だったのには、主に2つの理由がある。1つは、中国には製造経験や専門知識がほとんどないことだ。2つ目の理由は、中国国内にはDRAM関連のIP(Intellectual Property)が蓄積されていないことである。

 では、ChangXinはこうした基本的な課題をどのように解消しているのだろうか。

 ChangXinの事業開発ディレクターを務めるIan Ng氏によると、ChangXinの3000人の従業員のうち、70%はエンジニアと技術スタッフであるだという。

 ChangXinは、DRAMの基本的な知識を構築するために、韓国と台湾のエンジニアの採用を続けていることを認めている。同社は、元Qimonda(ドイツInfineon Technologiesのメモリ部門を分社化して設立されたDRAMメーカー。2009年に経営破綻)の技術スタッフも採用している。こうして採用されたメンバーの1人が、コンサルタントとして入社したKarl Heinz Kuesters氏である。

 Kuesters氏は、ChangXinのDRAM戦略の切り札的存在だ。同氏は2008年11月までの24年間、InfineonおよびQimondaで勤務し、Qimondaでは技術および先行開発部門のバイスプレジデントを務めた。

 Qimondaはトレンチキャパシタープロセス技術を得意としていたが、同技術は今では時代遅れのDRAM技術と見なされている。ChangXinが元Qimondaの従業員を採用したことが分かると、業界はChangXinがQimondaの古いトレンチ技術を使用していると推察した。しかし、ChangXinは、同社がスタックキャパシタープロセス技術を適用した生産に移行したと発表した。

 Kuesters氏は、Qimondaに在籍中、同社独自のスタックキャパシタープロセスの開発を担当していた。しかし、Qimondaはスタックキャパシタープロセスに完全に移行する前に資金が底をついたのだ。

ChangXinは、スタックキャパシタープロセスを用いていると発表した 出典:ChangXin Memory(クリックで拡大)

 ChangXinのエグゼクティブバイスプレジデントを務めるHongyu Liu氏は、「QualcommやApple、TSMCなどのハイテク企業は、IPだけでなく“企業秘密”の取り扱いに関する問題にも直面するのは避けられない」と述べている。

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