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新型コロナのエレクトロニクス業界への影響はどの程度か大山聡の業界スコープ(26)(1/2 ページ)

新型コロナウィルス拡散が半導体/エレクトロニクス市場、さらにはマクロ経済にどれほどの影響を与えうるのだろうか。ある程度の前提を定めた上で、おおよその影響を定量化してみたい。

» 2020年02月20日 11時30分 公開
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 2020年2月3日、国際半導体製造装置材料協会(SEMI)は、2月に韓国ソウルで開催予定だった「SEMICON Korea 2020」の開催を中止すると発表した。そしてその2日後には、3月に中国上海で予定していた「SEMICON China 2020」の開催も延期すると発表した。いずれも新型コロナウィルス拡散の影響を考えての判断であり、冷静に考えれば当然の措置だと言える。だが、2020年は年初からエレクトロニクス業界が活性化する期待が大きかっただけに、まさに出鼻をくじかれた感が否めない。

 では、この状況が半導体/エレクトロニクス市場、さらにはマクロ経済にどれほどの影響を与えうるのだろうか。最近、この類いの問いかけが非常に多く、さまざまな議論があちこちで行われている。ただ、結局は「推定困難」という結論しか出ていないようだ。ウィルス感染がどこまで拡大するのか、いつ終息するのかが分からない以上、確かに推定するのは困難である。しかし、ある程度の前提を定めた上で、おおよその影響を定量化することは必要だろうし、考え方の叩き台はあった方が良いだろう。そこで筆者としては、この場である程度の推定を行ってみたいと思う。

2003年のSARS流行時はどうだったのか

 推定するにあたり真っ先に思い浮かべたのは、2003年に流行した新型肺炎「SARS」(重症急性呼吸器症候群)による影響はどうだったか、ということだ。エコノミストのリー・ジョンファ氏とワーウィック・マッキビン氏が発表した論文によれば、マクロ経済への影響は400億米ドルだった、と試算している。別の試算によれば、東アジア地域への影響は半分の200億米ドルだった、とのこと。ただし2003年は米国のイラク侵攻などが重なっており、どこまでがSARSによる影響かを見極めることは困難だったはずである。ちなみに同時期の半導体市場は下記のグラフのように推移していた。グラフ中、四角く囲ってある部分は、SARS問題が浮上した2003年1〜12月期を示している。

 ITバブルの崩壊によって2001年に未曽有の不況に襲われた半導体市場は、2002年後半から徐々に回復し始め、2003年は同20%以上の成長が期待できそうだという矢先にSARSウィルス問題とイラク戦争が始まった。結果として2003年の半導体市場は前年比18.3%増の成長を記録した。だが、SARSとイラク戦争がなければ同30%増くらい成長したのではないか、などと言われたものである。

2003年当時の世界半導体市場の推移 出所:WSTSの資料を元にGrossbergが作成

 同じタイミングでイラク戦争が起こっていたため、SARSの影響を推定するのが難しいのは極めて皮肉な話ではある。ただ、半導体/エレクトロニクス業界としては、中国/アジア地区での有事がより大きなインパクトとなり得る。そのため「半導体成長が30%ではなく、18.3%に留まったのはSARSの影響の方が大きい」というのが筆者の率直な意見である。つまり、SARS問題によって半導体市場は伸び率が10%下がった、という推定である。

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