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産業向けを“第2の屋台骨”に、完全な製品群を目指すルネサス IoT・インフラ事業本部長 Sailesh Chittipeddi氏(1/3 ページ)

ルネサス エレクトロニクスでは、全社売上高に占めるIoT・インフラ事業本部の売上高比率を、現行の48%から50%に高め、自動車向け事業と同規模にすると発表している。IoT・インフラ事業本部長を務めるSailesh Chittipeddi(サイレシュ・チッティペディ)氏に、その戦略などを尋ねた。

» 2020年03月05日 11時30分 公開
[村尾麻悠子EE Times Japan]

 ルネサス エレクトロニクス(以下、ルネサス)は2017年にIntersilを、2019年にIDT(Integrated Device Technology)を買収した。それによって大きく変わったのが産業向け事業だ。分野別の売上構成比は、買収前は産業用が27%、IoTが15%、インフラが2%だったのに対し、2019年は産業用が19%、IoTが18%、インフラが12%となっている。インフラに強みを持っていたIDTの買収によって、同分野が大幅に強化された。

 ルネサスは2019年3月にIDTの買収を完了後、同年7月1日付で、産業向け事業をそれまでの「インダストリアルソリューション事業本部」から「IoT・インフラ事業本部(IIBU)」に変更。自動車向け事業に続く“第2の屋台骨”として事業統合を進めてきた。

 ルネサスが2020年2月17日に開催した中長期戦略説明会では、社長兼CEOの柴田英利氏が、全社売上高に占めるIoT・インフラ事業本部の売上高比率を、現行の48%から50%に高め、自動車向け事業と同規模にすると発表している。IoT・インフラ事業本部長を務めるSailesh Chittipeddi(サイレシュ・チッティペディ)氏に、その戦略などを尋ねた。

左=買収前後の売上構成比。分野別(by End Market)では、特にインフラ向けが大幅に増加している/右=IoT・インフラ事業本部(IIBU)における売上構成比。製品別では、産業、IoTともマイコンが半数を占めているが、インフラだけは、旧IDTが得意としていたアナログ半導体の比率が高い 出典:ルネサス エレクトロニクス(クリックで拡大)

新型肺炎と在庫が課題

――IoT・インフラ事業本部には、産業、インフラ、IoTの3つのセグメントがあります。売上高を伸ばしていく上での現在の課題を教えてください。

Sailesh Chittipeddi氏 直近の話をするなら、やはり新型コロナウイルス「COVID-19」の影響による懸念はあるものの、現在、一番向かい風が吹いているのは産業向けだ。これまでルネサスが強みを持っていたレガシーなビジネスが、低調になっている。2018年は、主要顧客企業で大量の在庫が発生し、2019年はこの解消に追われた。この作業は2020年も続くが、終わりしだい新製品の市場投入を始める。現在、ロードマップを大幅に強化していることもあり、産業向けではもうしばらくしたら回復基調に戻るだろう。

 IoTのセグメントでも同様に在庫の問題を抱えているが、これは産業向けよりはもう少し早く解消できそうだ。

――産業向けでは、なぜ在庫レベルが上がったのですか。

Chittipeddi氏 要因の一つは、気候変動によって気温の予測が難しくなったことだ。これによってわれわれのエンドカスタマーは、エアコンなどの季節家電の需要予測が難しくなってしまった。

技術移行とともに、“使える製品”を増やす

――IoT・インフラ事業本部の具体的な戦略を教えてください。

Chittipeddi氏 まずは製品の差別化を強化する。MCU/MPU、アナログ/ミックスドシグナルが、差別化を強化できる製品群だ。例えば8ビット/16ビットの「RL78」は、より広範囲なアプリケーションに対応できるような次世代版を2020年に発表する。ルネサス独自のコアを搭載した32ビットMCUの「RXファミリー」は、これからもルネサス製品の核となるものだ。これも製品ポートフォリオを拡充していく。

 それから、“コンテンツの拡大”だ。これは、既存製品を組み合わせて新しいソリューションを生み出したり、業界の技術移行に沿ってルネサスが提供できる製品を増やしたりしていくという意味だ。

 例えば、データセンター向けのメモリ分野ではDDR4からDDR5への移行が進んでいる。それによって、以前はレジスタしか提供できなかったが、PMIC(電源マネジメントIC)や温度センサー、I3Cハブなど、提供できる製品が大幅に増える。5G(第5世代移動通信)の分野も同様だ。4Gからサブ6GHz帯の5G、ミリ波を使用する5Gと技術が移行するにつれて、ルネサスが提供できる製品が多くなっていく。

 データセンターや5Gといったインフラ分野の事業においては、ルネサスの知名度は高くない。もともと旧IDTが強い分野だが、ルネサスが従来強みを持つアナログ技術、光半導体、レーザーといった製品を組み合わせることができる。ルネサス、旧Intersil、旧IDTの製品を掛け合わせることで、ルネサスがあまり目立たなかった市場向けの製品群を増やし、当社の存在感を上げていく。これが、“コンテンツの拡大”だ。

“コンテンツの拡大”の例。左=DDR3からDDR4、DDR5へと移行するに従い、ルネサスが提供できる製品(青い部品)が増えていく/右=5Gでも同様だ 出典:ルネサス(クリックで拡大)

 パートナーシップの締結も増やしていく。IoTの分野では、ルネサスのマイコンがMicrosoftのAzureをサポートすることを発表した。スイスの3db Accessとは、UWB(Ultra Wide Band:超広帯域無線通信)技術で協業する。ルネサスが3db AccessのUWB技術ライセンスを取得し、両社でスマートホームやインダストリー4.0、コネクテッドカーなどに向けたソリューションを開発する予定だ。オーストリアのPanthronics(パントロニクス)とも協業を発表した。ルネサスのワイヤレス給電ICと、PanthronicsのNFC(近距離無線通信)リーダー、コントローラーを組み合わせて、より幅広い用途でワイヤレス給電が採用されるよう、促進していく。

ルネサス IoT・インフラ事業本部長を務めるSailesh Chittipeddi氏
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