図3は2019年10月発売のNEC PC-8001の復刻版だ。HAL研究所の商品である。横幅10cm程度と小型化されているが、図3の左上のように、梱包箱から外観までもがオリジナルを忠実に復元している。また当時の環境がそのままインストールされたものとなっている。小型化されているのでキーボードはダミー。実際にはUSB端子に外部キーボードを接続して使うものだが、外観だけでも名機の復元を味わえる満足度は高い。右下は底面のカバーを外したところ。内部にはシングルボードコンピュータ「Raspberry Pi Zero WH」(以下、Pi Zero WH)がそのまま設置されている。
図4は、Pi Zero WHと、搭載されているチップである。Pi Zero WHは2018年1月に発売された。Pi Zero WHは最新の「Raspberry Pi4」よりも若干性能は劣るものの、プロセッサはCPU/GPU/Audio/Videoを備え、Wi-Fiチップも搭載した、IoT(モノのインターネット)ボードとして広く使われているものである。復刻版PC-8001はPi Zero WHでオリジナルのPC-8001の機能を実現しているわけだ。
図5は1979年のオリジナルのPC-8001である。(弊社ではオリジナル製品も数多く解析している)。復刻版に比べてサイズは各辺4倍ほど大きく重い。内部にはビッシリと半導体チップが並んだ基板が存在する。基板上には数社の半導体チップが並ぶ(詳細はテカナリエレポート402号に掲載)。
最も目を引くのがNECのロゴの入った「uPD780C-1」。NEC製の8ビットマイコンである。CPUには当時多くのメーカーが活用したZilogのZ80A互換機能が実装され、4MHzのクロックで動作するものであった。
図6は、2019年に発売になった復刻版PC-8001の基板(Pi Zero WH)とオリジナルPC-8001の基板との比較である。基板の体積、搭載されるチップ数はおおよそ2〜3%に縮小され、これだけでも40年の歳月と進化を十分に感じられる。搭載されるプロセッサの周波数もチップ性能として175倍化されている(最新のRaspberry Pi4との比較ならば375倍になる)。基板上に搭載されるDRAMの容量は1万6000倍。ハードウェアの進化がはっきりと数字で見て取れるものとなっている。Pi Zero WHの機能はオリジナルのPC-8001に比べて過剰機能の部分も大いにあるが、性能のアップと面積の縮小という両面での進化、変化を誰もが実感できるだろう。
「COVID-19」によるコロナ禍のさなかとはいえ、半導体業界は、次々と微細化の未来計画を発表した(詳細は記さない)。半導体製造プロセスは5nm、3nm、2nm……とさらに微細化が進み、機能も容量も増えて小型化されていく。今後も倍々進化は続いていくことは間違いない。2029年にPC-8001生誕50周年モデルが出るとして、そこに搭載されている基板や半導体はどうなっているのだろうか。性能や面積の数値が今とどう変わっているのか、ぜひとも見たいものである!
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