バーチャルであるが故に全ての講演を聞くことができなかった筆者には、IMW2020を総括することができない。そこで、General ChairのWei氏が、Opening RemarksおよびClosing Remarksで、IMWが集計して公開したデータを紹介されたことに基づき、IMW2020の概要を報告する。
まず、2009年〜2020年までの投稿論文数と採択論文数の推移を図4に示す。直近3年間では、投稿論文数は70件前後でほぼ一定である。一方、採択論文数は若干低下気味となっている。
IMW2020では、67件の投稿があり、そのうち18件が口頭発表に採択された。その採択率は27%である。ポスター発表9件を加えても採択率は42%であり、これはISSCC、IEDM、VLSIシンポジウム並みの狭き門である。これ以外に、9件の招待講演と5件のチュートリアル発表があった。
次に、2014年〜2020年の参加者数の推移を図5に示す。筆者が初めて取材した2018年は京都で開催され、IMW史上最多の345人の参加者があった。IMWは、米国のモントレーで開催されることが多いが、日本開催の場合、日本はもちろん、韓国、台湾、中国など、近隣のアジア諸国から多くの参加者が集まったと思われる。
バーチャル学会となった2020年は、192人の参加者だった。バーチャルなら、もっと多くの参加者があってもいいと思われるかもしれないが、世界中がコロナで大騒動していた時期であり、学会どころではないという方々も多かったのだろう。
それが、地域別の参加者の人数(比率)に表れている(図6)。既にコロナが終息していた中国、韓国、台湾、そして日本が含まれるアジアの参加者が85人(44%)と最も多かった。一方、世界で最も多くの感染者が出てしまった米国は66人(34%)、また、イタリア、フランス、ドイツをはじめ多くの国々で感染爆発が起きた欧州は41人(21%)にとどまっている。
もし、コロナが終息した後に、バーチャル学会を開催すれば、もっと多くの人々が参加したと思われる。というのは、バーチャル学会の長所で書いたように、渡航費やホテル代などの費用が一切かからないからだ。従って、2021年以降、リアルとバーチャルを併用すれば、筆者のようなフリーランスだけでなく、企業からも、多くの社員を参加させることができるのではないかと思う。
図7に、IMWが集計した、ポスターも含めた採択論文の内訳を示す。論文が多い順に、In-Memory Computing(27%)、FRAM(16%)、NAND(14%)、Embedded(14%)、RRAM(11%)、PCRAM&Selector(11%)、MRAM(5%)、DRAM(1%)となっている。
ここで、筆者が行った3年間分の発表内容の分類を図8に示す。このグラフには、上記には含まれていないチュートリアルと招待講演を含めている。というのは、チュートリアルも招待講演も、その時代に注目されているメモリを取り上げており、学会動向を示す指標になると思っているからだ。さらに、In-Memory ComputingとEmbeddedについても、その論文でどのようなメモリを対象としているかを読み取り、統計に加えている。
あらためて図8を見ると、ここ3年間で最も多いのは、NANDおよびFlashで、ことしも最多の15件の発表があった。次に多いのは、NeuromorphicおよびNeural Networkの8件である。また、PCMは3年間8件で横ばいであり、FRAMがここ3年間で増加し、ことしはPCMと同じ8件あった。一方、過去2年間、NAND&Flashに次いで多かったRRAMが6件に減少している。
2019年に開催された「IMW2019」では、Neuromorphicに注目した(関連記事:「Neuromorphicがブレイクする予感 ―― メモリ国際学会と論文検索から見える動向)。
しかしIMW2020は、特に3次元NANDの講演が多く、筆者もここに注目した。そこで、次節以降では、3次元NANDの各社の現状とロードマップを取り上げる。
なお、全てを紹介できないが、3次元NANDではキオクシア、Western Digital(WD)、Intel、imecなどが発表し、DRAMではMicron Technologyの発表があった。米国カリフォルニア州モントレーで行われたIMW2019で、筆者はChairの皆さんに、「半導体メモリの国際学会であるにもかかわらず、メモリのビッグカンパニーの発表がないのは少し寂しい」と意見を述べた。もしかしたら、Chairの皆さんがビッグカンパニーに論文投稿を促すなど、筆者の意見を取り入れて頂いたのかもしれない。ここに、感謝の意を表したい。
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