半導体メモリの国際学会「インターナショナル・メモリ・ワークショップ(IMW)2020」が5月17日〜20日の4日間、バーチャル方式で開催された。本稿では、チュートリアルの資料を基に、NAND型フラッシュメモリメーカー各社の現状とロードマップを紹介する。
半導体メモリの国際学会「インターナショナル・メモリ・ワークショップ(IMW)2020」が5月17日〜20日の4日間、バーチャル方式で開催された(図1)。当初、本学会は、ドイツのドレスデンで開催する予定だったが、新型コロナウイルスの感染が世界中に拡大していたため、オンデマンドによるバーチャル方式に変更された。
筆者は、2018年から3年連続でIMWを取材しているが、バーチャル学会への参加は人生初体験であり、バーチャル方式には長所と短所があることが分かった。
本稿では、まず、IMW2020のバーチャル学会がどのように行われたかを説明し、バーチャル学会の長所と短所を述べる。次に、IMWの主催者による論文内容や参加者などの集計結果を紹介し、IMW2020にはどのような特徴があったかを報じる。そして、論文数が最も多かった3次元NANDに焦点を当て、主としてチュートリアルの資料を基にして、NAND型フラッシュメモリ(以下、NAND)メーカー各社の現状と今後のロードマップを論じる。
IMW2020の初日の5月17日は、General ChairのZhiqiang Wei氏(Avalanche Technology)のOpening Remarksの動画から始まった。Wei氏は、図2を使ってプログラムの概要を説明した。
まず、5月17日は、3次元NAND(3件)とMRAM(2件)のチュートリアルが視聴可能となる。その開始時間は米国時間を基準とする。Q&Aについては、各講演動画の画面の横に指定されたボックスがあり、そこにテキストを書き込む方式がとられた。ただし、Q&Aを受け付けるのは、動画がオープンになってから24時間以内に限定された。一方、一度オープンになった動画は、5月25日まで視聴可能だった。
5月18日から本会議の講演が視聴可能になった。Q&Aの受付は24時間以内であること、動画は5月25日まで視聴可能であることはチュートリアルと共通である。
本会議の講演は、18日、19日、20日と、毎日新たな動画が視聴できるようになり、最終日の20日に、Wei氏のClosing RemarksでIMW2020の終了が宣言された。ただし、以上の全ての動画は、5月25日まで視聴可能となっていた。
チャートリアルや本会議の講演者は、自宅のPCでパワーポイントを映して、その説明を録音する。そして、参加者は、自宅のPCで、音声付きのパワーポイントを視聴する、という方式だった。
筆者にとって人生初のバーチャル学会参加の経験から、その長所と短所を実感した。
まず、長所としては、渡航費用やホテル代がかからず、自宅のPCで学会に参加できることが挙げられる。筆者のようなフリーランスのジャーナリストにとって、取材のコストが一切かからないということは、涙が出るほどありがたいと思った。
また、講演の動画は、途中で止めることもできるし、何回も繰り返して視聴できる。従って、分からない専門用語や英単語が出てきたら、途中で動画を止めて、納得するまで調べることができる。リアルな学会の場合は、講演の途中で分からなくなると、その後は理解を放棄するということもある。しかし、バーチャルなら、その気になりさえすれば、とことん調べることができる。これは大きな長所だと思った。
一方で短所もある。録画された動画を視聴するわけだから、まったく臨場感がない。Q&Aを行う仕組みはあったが、やはり、Face to Faceで生の声を聴くことができないのは、非常にもどかしく感じた。
そして、最大の問題は、学会に集中できないことである。もし、当初の予定通り、ドレスデンで4日間の学会が開催されていたら、その期間中は学会の講演を聞くことに没頭しただろう。チュートリアルは1件1時間、本会議の発表は1件20分であるが、途中で理解できない講演があろうとも、とにかく学会期間中は全ての講演を聞き続けたと思う。
ところが、自宅のPCで動画を見るバーチャル方式では、前述した通り、途中で分からなくなったら動画を止めて調べ始めるし、気になる箇所は何度も聞き返すため、20分の動画を理解するのに1時間以上かかったりした。
その上、学会期間中であっても、他の仕事を並行して行っていたし、動画を視聴しているときに電話がかかってきたり、メールが来たり、宅配便が届いたりと外部要因で中断することも多く、「学会の動画を視聴することに全力投入」できないのである。
その結果、チュートリアル5件の講演は何とか全て視聴したが、本会議の38件の講演のうち、きちんと視聴することができたのは15件にとどまった。この15件は、ほぼ完全に理解したと思うが、聞けなかった23件については何も分からない。
そのため、「木を見て森を見ず」という事態となってしまった。リアルな学会なら、自分の能力では消化できない講演がいくつかあっても、その学会の特徴を一言でいえるようになるものだ。しかし、初のバーチャル学会となったIMW2020は、それができない状態となった。
そこで、Closing Remarksを聞いた後、Chairの方々に、プレスとして参加させて頂いたお礼を述べた上で、「2021年以降は、リアルとバーチャルを併用したらどうでしょうか?」という意見を述べさせて頂いた。もし、リアルとバーチャルを併用すれば、学会会場で日中はリアルな講演を聞き、夜にバーチャルの動画を視聴して、リアルでは理解できなかったことを補完できると思ったからだ。
今回はコロナ騒動のために、Chairの皆さんが奮闘して、2カ月程度の短期間でバーチャル学会の開催に漕ぎつけた。その尽力には本当に頭が下がる思いである。そしてせっかく作り上げたバーチャルの仕組みを、2021年以降にも生かして頂くことを期待している。ちなみに、「IMW2021」の開催地は、リベンジマッチとして、ことしできなかったドレスデンを予定している(図3)。
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