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登場し始めた安価な5Gスマホ、基板は“1層+分離”がメインにこの10年で起こったこと、次の10年で起こること(45)(1/3 ページ)

2020年は、ハイエンド機種だけでなく普及価格帯のスマートフォンも5G機能が搭載されるようになっている。5G対応を安価に実現できた鍵は、“1層+分離”のメイン基板にある。

» 2020年06月30日 11時30分 公開

普及価格帯のスマホでも5G対応が進む

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 2020年は5G(第5世代移動通信)普及の2年目にあたる。2019年は高級機(10万円クラス)を中心に5Gスマートフォンが大手を中心にリリースされていたが、2020年は普及価格帯のモデルにも標準的に5G通信機能が装備されている。日本でも2020年3月に5G通信サービスが開始され、今夏は各キャリアから続々と5G通信対応のスマートフォンがリリースされている。日本では3大キャリアから計10機種が販売され、採用されているプラットフォーム(チップセットソリューション)は2種類だ(後述)。

 今回は、日本のキャリアモデルではないもの(ただし日本でも通販などで容易に入手可能)も含めて3機種のほぼ最新の普及モデルの5Gスマートフォンを取り上げる。価格帯は5万円くらいからとなっている。

 図1は中国OPPOの5Gスマートフォン「OPPO Reno3 5G」である。現在は、内部プラットフォームは同じままでカメラ機能が向上した「OPPO Reno4」が販売されている。相変わらず中国メーカーの製品投入ペースはすさまじく速い。日米のメーカーは、ほぼ1年に1回新製品を発表するのが一般的だが、中国メーカーは3カ月に1回程度のハイペースで新機種を市場に投入している。

図1:OPPOの5Gスマートフォン「OPPO Reno3 5G」 出典:テカナリエレポート(クリックで拡大)

 われわれ調査を行う者にとって、ようやっと入手して分解し、解析し、レポート化してリリースしようという段階で既に新機種が出てしまい、解析結果が古いものになってしまうこともある。Reno3 5Gは4眼カメラを搭載した、6.55型OLEDのスマートフォンである。内部の基板はオーソドックスな1層の四角い基板である。

 2019年の5Gスマートフォンはほとんどが2階建ての2層基板構造であったが、2020年の普及帯の5Gスマートフォンはほとんどが1層基板となっている。5Gでは高帯域の通信を行うのでノイズや電源の対策から通信基板とプロセッシング基板を2階建てによって分離し、特性の異なるものは階を分ける対策を行っていたが、2020年の普及モデルでは、価格の安い1層基板が主流となっている。

 パッと見の基板構造は4G LTEのモノと大きな差はないが、図1右上の写真でも分かるように基板上には多くの島(シールド分離/チップの配置の周囲を囲む白い線:図1の赤矢印)があり、機能や周波数などによって細かく基板上で分離されている。いわゆるバリアを持っているわけだ。

 図1の面では6島に分離されており、裏面は3島分離となっている。縦方向に2階建て基板にすることは特性上優位だが、価格が上がってしまう。横方向にバリアを形成し分離することで普及モデルの5Gスマートフォンは価格を抑えているわけだ。このような分離による機能分けは当然4G LTEでも使われていたものである。ただ、5Gでは島の数が増えている(詳細はテカナリエレポートに407号に掲載)。

 図2は、図1のReno3 5Gの内部のチップセットおよび機能チップ国籍分布である。

図2:Reno 3 5Gに搭載されているチップの国籍分布 出典:テカナリエレポート(クリックで拡大)

 Reno3 5Gでは台湾MediaTekの新プラットフォーム「Dimensity 1000」が採用されている。Dimensity1000はTSMCの7nmプロセスで製造され、最新のArm CPU、GPUや、MediaTekの第3世代のAIアクセラレーターが搭載され、さらに5Gベースバンドプロセッサを統合した、完全な1チッププロセッサ(SoC:System on Chip)である。さらにMediaTek製の通信用トランシーバー、電源ICなどもセット化されたものになっている。Reno3 5Gの内部の37.5%がMediaTekのチップだ。メモリ、センサー、通信用パワーアンプなどがMediaTekのチップセットに接続される構成となっている。

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