SIAで産業統計および経済政策担当ディレクターを務めるFalan Yinug氏は、「米国の半導体メーカーが現在、世界IC市場の47%を占めているのに対し、中国の市場シェアはわずか5%にとどまっている」と述べる一方で、「中国政府が、米国の半導体輸出への依存度の低減に意欲的に取り組んでいることを考えると、米国がこのリードを維持するのは難しいだろう」とも指摘する。
中国は2020年5月、2025年までに1兆4000億米ドルを投じるハイテク強化計画を全国人民代表大会(全人代)にて承認した。米シンクタンクのITIF(Information Technology and Innovation Foundation)のStephen Ezell氏によれば、この計画は、中国国内で半導体エコシステムを構築し、2035年までに米国製チップの輸入から脱却することが狙いだという。
Ezell氏は、中国の野心的な半導体戦略は、設計ツールや製造装置に対する米国の輸出規制の強化によって阻まれる可能性が高いと指摘している。米国製ツールや装置へのアクセスを遮断することは、「中国が米国のチップベンダーから独立するという目標を達成することをはるかに難しくする」と同氏は指摘する。
とはいえ、米国のチップ産業のアキレス腱(けん)は、製造能力の低下であることに変わりはない。VLSI ResearchのDan Hutcheson氏によると、20年前に稼働していた国内のチップメーカー30社のうち、残っているのは5社だけだという。特にロジックチップの80%は海外で製造されているとHutchenson氏は見ている。
業界関係者は、政策担当者が、半導体製造を官民連携による戦略的産業として再興する必要があると考えるようになってきていると主張する。Hutchenson氏は、“ポスト・コロナ”では、第二次世界大戦後に米国防省やNASA(アメリカ航空宇宙局)などがエレクトロニクス業界にばく大な額を投資した時と同じような状況になる可能性があると、指摘している。
【翻訳:滝本麻貴、編集:EE Times Japan】
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