メディア

SiCはウエハー品質が課題、GaNは統合がトレンドにYole Developpement

パワーエレクトロニクスは、GaN(窒化ガリウム)とSiC(炭化ケイ素)の採用によって、興味深い道を歩んできた。フランスの市場調査会社であるYole Developpement(以下、Yole)は、これらのワイドバンドギャップ材料の概観を発表した。

» 2020年07月30日 10時30分 公開

 パワーエレクトロニクスは、GaN(窒化ガリウム)とSiC(炭化ケイ素)の採用によって、興味深い道を歩んできた。フランスの市場調査会社であるYole Développement(以下、Yole)は、これらのワイドバンドギャップ材料の概観を発表した。

 市場では依然としてSi(シリコン)の採用が圧倒的に多いが、GaNパワーデバイスとSiCパワーデバイスは、一部のアプリケーションでは既により効率的なソリューションになっている。開発の観点から言えば、SiCの研究は、大口径のSiCウエハーの品質とパワーモジュールの開発を中心に行われている。GaNは主に、GaNデバイスの統合(SiP[System in Package]またはSoC[System on Chip])に関する研究が進められている。

SiCは6インチウエハーの高品質化が課題

 Yoleで技術および市場アナリストを務めるEzgi Dogmus氏は、SiC回路の処理に使用されるウエハーのサイズについて次のように説明している。「ここ数年で4インチから6インチへの移行が進んだ。現在も、6インチウエハーを生産するデバイスメーカーはさらに増えている。だが、現時点ではまだ、高品質の6インチウエハーの生産は難しい。基板の成長だけでなく準備の面でも課題が多く、次世代プロセスの歩留まりに直接影響する。歩留まりを最大化して製品コストの効率化を図るために、デバイスメーカーは徹頭徹尾、良質の材料をそろえて生産を開始することが望ましい」(Dogmus氏)

SiCパワーデバイスの用途と市場シェア 出典:Yole Développement(クリックで拡大)

 Dogmus氏は続けて、「CreeやII-VI、SiCrystalなどのSiCウエハーの主要企業の他、中国企業も多額の投資を行っている。この分野にはさまざまな企業が関与している。基板サプライヤーであるWolfspeed(CreeのSiC事業)やSiCrystalと、デバイスメーカーであるInfineon Technologies(以下、Infineon)やST Microelectronics(ST)との間で複数年にわたる供給契約が締結されている」と述べている。

 ON Semiconductor(以下、ON Semi)も、量産市場に対応できることを示すために、SiCウエハーメーカーと長期契約を結んでいる。これらの取引のほとんどは、2018年から2019年の間に締結されたものだ。

 Dogmus氏は、「STは、Teslaとパートナーシップを結んでメインインバーターに搭載するSiCパワー半導体を提供していることからも分かるように、現在のSiC市場で最大のシェアを誇っている。同市場ではこの他、InfineonとON Semiも産業および車載アプリケーションをターゲットに参入している」と述べている。

 同氏は、「ON Semiは、内部SiC基板も開発している。また、SiC素材の供給でGT Advanced Technologies(GTAT)と契約を結んでいる。SiCパワー半導体市場では、高品質であることの他、サプライチェーンに垂直統合し、材料の全体的な管理を行うことも不可欠である」と述べている。

GaNはSiP/SiCとしての統合がトレンド

 一方のGaNパワーデバイス業界では、TSMC、X-Fab、Episil Technologiesといった“老舗”ファウンドリーとの協業がトレンドとなっている。

 GaNパワーデバイスは、主に急速充電器向けに家電市場で販売されている。Yoleの技術/市場アナリストであるAhmed Ben Slimane氏は「SiPやSoCとしてGaNを統合するというトレンドがある。これらは現在、急速充電器向けに提供されている主なソリューションだ」と述べている。

GaNパワーデバイスは今後、自動車やデータセンターなどでも採用が進むと予測されている 出典:Yole Développement(クリックで拡大)

 「急速充電器の主な要件は電力密度と効率だ。そのため設計者は、フォームファクターをかなり小型化し、パワー当たりの価格(price per power)を低減しなくてはならない」(同氏)

 GaN基板には、GaN on SiliconとGaN on Sapphireの2つがある。GaN on Siliconは主に6インチウエハー(8インチの場合もある)で開発されている。

 Ben Slimane氏は「もちろん今後も、ディスクリートのGaNパワーデバイスは開発されるだろう。ただディスクリートは、データセンターや基地局向け電源など、より高電力を必要とするアプリケーションに向けた製品となりそうだ」と述べた。

 RFの分野では、数年前にHuaweiが4G(第4世代移動通信)/LTE基地局にGaNパワーデバイスを採用している。「来たる5G(第5世代移動通信)では3GHz帯以上が使われることになり、GaNパワーデバイスに、より多くのチャンスをもたらすことになる。高い周波数帯において、GaNパワーデバイスは従来のLDMOSよりも電力密度が優れているからだ」(Dogmus氏)

2020年6月にYoleが発表したGaNパワーデバイス市場の予測。民生機器が圧倒的多数を占めるが、自動車と通信/テレコムでも増えるとみられている 出典:Yole Développement(クリックで拡大)

【翻訳:滝本麻貴、編集:EE Times Japan】

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

RSSフィード

公式SNS

All material on this site Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
This site contains articles under license from AspenCore LLC.