東京大学らの共同研究グループは、「無電解めっき」でパターニングをした金電極を有機半導体に貼り付けた、「高性能有機トランジスタ」の製造に成功した。
東京大学と産業技術総合研究所(産総研)、物質・材料研究機構(NIMS)の共同研究グループは2020年8月、「無電解めっき」でパターニングをした金電極を有機半導体に貼り付けた、「高性能有機トランジスタ」の製造に成功したと発表した。
東京大学大学院新領域創成科学研究科と同連携研究機構マテリアルイノベーション研究センター、産業技術総合研究所産総研・東大先端オペランド計測技術オープンイノベーションラボラトリおよび、物質・材料研究機構国際ナノアーキテクトニクス研究拠点(WPI-MANA)の研究グループはこれまで、「めっき」と呼ばれる手法を用いて、有機デバイスを製造するための方法を研究してきた。
有機デバイス用電極の成膜を行うにはこれまで、高真空下で貴金属を蒸着する必要があった。今回は、化学反応だけで金属薄膜を形成する「無電解めっき」を用いて、金電極を作製した。このため、高真空プロセスを必要としなくなった。また、親液・撥液パターニングにより、従来のようなリソグラフィー工程を用いなくても、約10μmという微細なパターニングを可能とした。
無電解めっき電極を形成するプロセスはこうだ。まず、親液・撥液パターニングにより銀微粒子層のパターニングを行う。次にフッ素系高分子薄膜に真空紫外光LEDを部分的に照射し、銀微粒子インクをはじく領域とぬれる領域を選択的に設ける。この後、銀微粒子インクを塗布し、銀微粒子層のパターンを形成する。この基板を金めっき液に浸すと、銀微粒子層上に金の薄膜が形成されるという。
パターニングをされた金電極は、同研究グループが開発した電極転写法を用いて、厚みがわずか4nmの単結晶からなる有機半導体上に貼り付け、有機トランジスタを試作した。
この素子にゲート電圧を印加し、流れるドレイン電流との関係から移動度を求めた。この結果、移動度は約10cm2/Vsとなり、実用レベルに達していることが分かった。また、金属−有機半導体界面の接触抵抗は約120Ωcmと小さく、金めっき電極の有用性が実証されたという。
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