エッジAI(人工知能)への移行は、高性能プロセッサが鍵を握っている。エッジ/組み込みデバイスに匹敵する価格と消費電力量、サイズを実現しながら、優れた性能を提供できるプロセッサである。
AI(人工知能)やコンピュータビジョンが、サイエンスフィクションの類のものと見なされていたのは、それほど昔のことではない。それが今や、「Alexa」や「Siri」のようにどこにでも存在するものになった。さらにキッチン家電は、何を料理するのかを認識して、完璧に作れるようサポートすることまで可能だ。
現在では、機械学習の推論をエッジ(端末)で実行するケースが増えている。携帯電話機や家電、自動車、産業用ロボット、カメラ、ビルのサーバクローゼットなどさまざまなシステム上で実行されている。これらに共通しているのが、「かつてないほどセンサーに近い場所で処理を実行する」という点だ。
Edge AI and Vision Allianceは、エッジAIを後押しする要因として、帯域幅(Bandwidth)とレイテンシ(Latency)、経済性(Economics)、信頼性(Reliability)、プライバシー(Privacy)の5つを取り上げた。これらの頭文字を取って、多少ぎこちない感じはするものの「BLERP」と名付けている。
帯域幅:例えば、商業温室やカジノ、小売スペースなどで、数百台規模のカメラを設置している場合、全ての情報をクラウドに送信して処理するという方法は難しい。どのような種類のインターネット接続でもダウンしてしまうからだ。このため単純に、ローカルで処理する必要がある。
レイテンシ:例えば自動運転車の場合、歩行者が横断歩道に突然現れた時に、自動車のコンピュータが判断を下すまでに要する時間は、わずか数百ミリ秒である。画像をクラウドに送信して応答を待つとしたら、もっと時間がかかるだろう。
経済性:クラウドコンピューティングや通信では、常に高性能化と低価格化が進んでいるが、コストがまだかなり高い。特に、動画や画像のデータになると膨大なコストを要する。エッジコンピューティングは、クラウドに送信しなければならないデータ量を削減できるので、コスト削減を実現することが可能だ。
信頼性:顔認証機能を搭載したホームセキュリティシステムでは、もしインターネットがダウンしてしまっても、ローカル処理を実行していれば、家族が家の中に入ることができる。システムのフォールトトレラント(耐障害性)を実現することが可能だ。
プライバシー:オーディオ/ビジュアルセンサーが広く普及したことにより、プライバシーに関する懸念が深刻化している。情報をクラウドに送信するとなると、こうした懸念は劇的に高まっていく。より多くの情報をローカルで処理、消費することができれば、不正利用のリスクも低減できる。米国ネバダ州ラスベガスの非公式の標語「What happens in Vegas stays in Vegas.(ラスベガスで起きたことはラスベガスに残る)」を置き代えて、「What happens at the edge stays at the edge.(エッジで起きたことはエッジに残る)」といえるだろう。
これら5つの要素が、AIエッジへの移行をけん引しているのであれば、その移行を成功させることができるのは、高速かつ高効率のプロセッサである。コンピュータビジョンや深層学習は、数百万もの画素やオーディオサンプルなどから意味を抽出することが可能なため、非常に魅力的だ。
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