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コロナ後の新しい価値観を探る 〜3つのウェルネスとデジタルアクセラレータイノベーションは日本を救うのか(37)番外編(1/4 ページ)

コロナ禍は、新しい価値観を探る機会なのではないか。こうした中、筆者は最近、今後の世界観あるいはフレームワークとして、「3つのウェルネスとデジタルアクセラレータ」を提唱している。今回は番外編として、これらの考え方を紹介したい。

» 2020年09月16日 11時30分 公開
[石井正純(AZCA)EE Times Japan]

“地球規模”で価値観を見直す

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 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、一時期は感染拡大が収まりつつあるかのように見えた地域でも第二波に見舞われたり、クラスターが各所で発生したりと、収束の気配が再び遠のいている。

 さらに、この原稿を書いている2020年9月11日(ちなみに19年前のこの日、米国では、ニューヨークの世界貿易センターなどが攻撃を受けた同時多発テロ事件が起こった)現在、米国のシリコンバレーを囲む北カリフォルニアの地域は未曽有の山火事に襲われている。これまでに東京都の面積の4倍近にあたる8500平方キロメートルが焼け、20万人以上が避難を余儀なくされている。スタンフォード大学の近くにある我が家も、朝から全ての窓を閉め切り、外出を控える日も増えている。

 カリフォルニア州では、これまでにないほどの熱波の影響で猛暑が続き、ただでさえ乾燥していたところに、当地北カリフォルニアでは一晩2500回以上の落雷(dry thunderstorm)がその乾き切った大地を数日間にわたって襲った。これが、大規模な山火事を引き起こしたのだ。

COVID-19の収束のメドは立っていない。カリフォルニア州では、未曾有の山火事が発生している

 これは、実は筆者は「天災」というより、コロナ禍と並んで「人災」ではないかと思っている。そして、これらの禍は、人間と自然の関わり合い方についてあらためて深く考える機会を提供しているのではないかと考えている。例えばCOVID-19は、ヒトの健康だけでなく、社会の健康、地球の健康、そして、ヒトとヒト、ヒトと社会、ヒトと地球の関わりについて世界規模で考え直す、およそ初めてのチャンスなのではないだろうか。

3つのウェルネスとデジタルアクセラレータ

 筆者は最近、今後の世界観あるいはフレームワークとして、「3つのウェルネスとデジタルアクセラレータ」を提唱している。これまでの仕事や多くの人々との対話を通じて筆者なりに至った考え方だ。

 そこで、今回は前回に続いて番外編をもう一つ、「3つのウェルネスとデジタルアクセラレータ」をベースにしてヒトの在り方と技術の在り方を、いくつかの事例を拾いながら読者の皆さんにも考えて頂く材料を提供したい。

 ここでいう「ウェルネス」は、いわゆる「健康であること」と考えていただいて構わない。

 それを踏まえた上で、筆者が提唱する「3つのウェルネス」とは、「地球のウェルネス」「社会のウェルネス」「ヒトのウェルネス」を指す。また「デジタルアクセラレータ」はこれらの「ウェルネス」を加速的に前進させるさまざまなデジタル技術のことだ。

 これを図で表すならば、1本の水平線上にヒトの健康(ウェルネス)、社会のウェルネス、地球のウェルネスがあり、さらにヒトとヒトとの関係、ヒトと社会の関係、ヒトと地球(自然環境)との関係がある。それらの関係はあくまでも緩やかで柔らかく、あくまでもアナログ的だ。一方で、水平線の下には、限りなく高速でデジタル的な世界、つまりデジタルアクセラレータの世界が広がっている。水平線を挟んで、デジタルアクセラレータの世界がヒト、社会、地球を支えているイメージを持っていただければと思う。

 これらの世界をつなぐインタフェースはOUI(Organic user interface;有機的インタフェース)と考えればよい。

筆者が提唱している「3つのウェルネスとデジタルアクセラレータ」

 20世紀まで、物質的な豊かさを求めて人間の経済活動が行われ、それには資本主義が大いに役立ってきた。つまり、より多くのモノをより多くの消費者に提供し、その過程で企業は利潤を確保し、株価も上げるという経済活動だ。だが、21世紀に入って、物質的なニーズが多くの分野で満たされた。これまでの価値観は、便利、省力、効率化、物資質的充足といったキーワードに代表され、コンピュータ、自動改札、ATM、産業用ロボット、高速通信・携帯端末といった製品により具現化されてきたと言える。

 しかしながら、これを達成する中でヒトは自然を大いに搾取してきた。地球温暖化やエネルギー問題、産業廃棄物問題といった多くの“負の遺産”を作り上げ、蓄積してしまったことも事実だ。これまでの価値が「便利さ」「効率」「モノの充足感」だったとすれば、これからの価値は「心の充足感」になるのではないだろうか。そして、これからは、心の豊かさを具現化するハード、ソフト、ソリューションを含むデジタル技術とそれらをベースにした、ソリューションやサービスが主要産業に育つと考えられる。これは、ヒトと自然の関係、ヒトと社会の関係、ヒトとヒトとの関係で生まれる幸福感といっても良い。

 ただし、もちろん、このために人類は昔に戻れば良いという話ではない。これらの実現を支え、加速度的な推進力になれるのがデジタル技術であり、イノベーションなのである。だからこそ、「デジタルアクセラレータ」と呼びたいのだ。

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