PCのメモリ需要は、再び拡大しているのだろうか。5G(第5世代移動通信)対応スマートフォンは、リモートワーカーにとって頼りになるデバイスになるのだろうか。
PCのメモリ需要は、再び拡大しているのだろうか。5G(第5世代移動通信)対応スマートフォンは、リモートワーカーにとって頼りになるデバイスになるのだろうか。
現在、在宅勤務をする人が増加していることから、IT分野では、PCの性能不足に関して不満の声が上がることだけはなんとしても避けたいところだ。そのためには、必ずしもデスクトップやノートPCのRAMを増設すれば解決できるというわけではない。スマートフォンが、ユーザーの勤務時間外での使い方とうまく合致した方法で、より多くの作業空間経験を提供することができれば、解決できるのではないだろうか。
デスクトップPCは、DRAMのアーリーアダプターであり、これまでハイエンドのゲーミングPCがその先頭に立って進んできた。サーバ市場では、データセンターの拡大や、クラウドコンピューティングへの移行、ハイパースケールの台頭などに伴い、最先端かつ高性能なDDR仕様やSSDに対する需要が高まっている。
データセンターにおいてAI(人工知能)などの新しいアプリケーションが登場したことにより、一般的にゲーミングやデザイン向けの高性能デスクトップに搭載されているGDDR DRAMが消費されるようになってきた。
一方で、スマートフォンやタブレットが進化したことにより、モバイルユーザーの間でデスクトップPCの人気が低下している。多くの人々は、自宅にはオフィスコンピュータはいらないと考えてきた。
だがリモートワークは今後、長期間にわたって続くとみられることから、PCの販売台数が再び増加している。PCは、自宅で仕事をするために必要なだけでなく、教育やゲームなどでの使用も増加している。市場調査会社のIDC(International Data Corporation)とGartnerのレポートによると、2020年第2四半期のPC需要は非常に堅調だったという。
PCメーカーは米国市場において、前年同四半期比で2桁成長を記録し、2009年以来初めてとなる規模の成果を達成した。IDCは、こうした需要の主要なけん引要素として、在宅勤務とEラーニングを挙げている。ただし、ポストパンデミックの世界でもこのような需要が続くのかどうかは不明だ。
Gartnerは、「世界PC市場は2020年第2四半期に、少なくとも短期的な回復を遂げた。ただしその一因として、販売業者や小売販路が必需品の補充を通常に近いレベルまで戻したという点が寄与している。また、モバイルPC需要の増加は、パンデミックによるものであるため、2020年以降も継続するとは考えられない」と警告している。
デスクトップPCメーカーは、IT部門における新たな課題を考慮しながら、ユーザーが在宅勤務なのかオフィスに戻るのかに関係なく、ワークステーションがその期待に応えられるようにする必要があることを認識している。
Dellは2020年8月、小型ワークステーション「Precision 3240 Compact」を発表した。最小限の設置面積で優れた性能を発揮するため、VR(仮想現実)やAIシミュレーション、エンタープライズアプリケーションなどを実行できる。最大64GB(2933MHz)のメモリを搭載可能で、SSDストレージは合計4TBだ。
Lenovoは、中小規模のビジネスをターゲットとする。人気が高いノートPC「ThinkPad」シリーズの最新版として「ThinkPad X1 Nano」を発表した。薄型化と軽量化を実現しながら、生産性アプリケーションに必要な性能を提供することが可能だという。またHPE(Hewlett-Packard Enterprise)は最近、同社の「Zシリーズ」をアップデートし、リモートワーク向けに性能やハードウェア拡張性、汎用性などを向上させている。
これらのプラットフォームは、ワークステーション上でローカルに実行される生産性アプリケーションに後れを取らないよう、十分なメモリやストレージを必要とする他、仮想デスクトップインフラ(VDI:Virtual Desktop Infrastructure)を実行できるだけの十分な計算能力も必要だ。これを実現することで、リモートワーカーたちがオフィスアプリケーションを実行できるようになる。
米国の市場調査会社Global Market Insightsは、VDI市場は2026年までに、300億米ドル規模に達すると予測している。その一因として、モバイルデバイスがエンタープライズコンピューティング向けとして幅広く導入されていくことが挙げられる。一方メーカー各社は、幅広い種類のソフトウェアやアプリケーションを提供している。今後、“持続性のある”VDIインスタンスを介して、仮想デスクトップの個々の設定要件に関する需要が高まるだろう。VDIのハードウェア分野は、デスクトップPCやノートPC、スマートフォンなどのエンドユーザーのコンピューティングデバイスで構成され、サーバとクライアントの両サイドに対応していくとみられる。
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