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「スマホの多眼化」がコロナ禍を吸収?イメージセンサー市場の未来はOMDIAのアナリストに聞く(1/4 ページ)

拡大を続けるイメージセンサー市場の今後の展望やそして新型コロナウイルス感染症(COVID-19)感染拡大の影響について、市場調査会社OMDIAのシニアプリンシパルアナリスト、李根秀氏に話を聞いた。

» 2020年10月12日 12時10分 公開
[永山準EE Times Japan]

 デジタルカメラをはじめ、街頭や施設の監視/防犯カメラ、産業機器、そしてスマートフォンなど、現在、社会のあらゆる場所にカメラは存在する。特にスマートフォンの普及から市場は急速に拡大。カメラの『網膜』の役割を果たす「イメージセンサー」は、既に半導体市場の全体でもメモリやロジックに並ぶ大規模市場を形成している。

 この市場の今後の展望は、そして新型コロナウイルス感染症(COVID-19)感染拡大がどのような影響を及ぼすのか、今回、市場調査会社OMDIAのシニアプリンシパルアナリスト、李根秀氏に話を聞いた。

コロナ禍で沈んだスマホ市場、回復の追い風を起こすのもコロナ

 OMDIAによると、2019年のイメージセンサーの出荷数(スマホ向けToF(Time of Fligh)センサーの13億9500万個を含む)は67億1800万個に上ったという。出荷数は2017年が54億3300万個、2018年が60億4800万個と2年連続で約11%超という驚異的な成長を続けてきたが、この成長の原動力となっているのがスマホ向けのイメージセンサーだ。スマホ向けイメージセンサーは2019年、出荷台数全体の60%を占めている。このシェアはスマホのToFセンサー向けも含めると8割超にまで及ぶ。

 この市場で圧倒的なトップシェアを誇るのがスマホ用途において「iPhone」やHuaweiをはじめ多くのメーカーのスマホに採用されているソニーで、2019年のイメージセンサー市場全体154億5100万米ドルのうち、ソニーが過半数の53%を占めてシェアトップを維持した。その後、2位はSamsung Electronicsで18%、3位がOmniVisionで11%、4位がON Semiconductorで4%と続いている。

イメージセンサー出荷台数の推移(予測含む)と用途別シェア 出典:OMDIA

 全世界のスマホ年間出荷台数は、近年14億台前後で推移しており、スマホ市場は既に成熟期に入ったといえる。李氏は、「スマホを4年間使うと仮定すればそれだけで60億台近い規模であり、アクティブなマーケットにはほぼ普及しきった状態だ」と説明している。また、2020年はCOVID-19感染拡大による市場低迷の影響から、2020年5月時点でも前年比13.2%減の12億台程度となると予測されている。いまだ収束の兆しが見えないなか、この予測はさらに下振れする可能性もある。

OMDIAのシニアプリンシパルアナリスト、李根秀氏

 それでも、2021年以降のスマートフォン市場の見通しは明るいという。李氏は、「メーカーの投資意欲や中長期計画を聞くと、2021年以降は急速に回復する見込みを持って、強気の姿勢で準備を進めている」と説明。OMDIAの予測でも2021年には回復に向かい、少なくとも2030年までは安定した成長を継続。スマホの出荷台数は2024年には16億台、2029年には18億台を突破する見込みだという。

 成長の要因としては5G(第5世代移動通信)サービスの本格化とともに、COVID-19感染拡大によって進む「新しい生活様式」の定着が大きな役割を果たす。李氏は、「生活様式の変化によって縮小する市場がある一方で、ITリモート時代へ急加速したことによって、ことスマートフォンや電子機器、タブレット、そしてノートPCなどについては需要が拡大するという見方が強い」と説明する。急速に普及するリモートワークやリモート授業向けとして、ノートPCやタブレット、WEBカメラへの需要は世界的に拡大しているが、これはスマホに関しても同様で、スマホについてはさらにコンサートやスポーツ中継などのエンターテインメント分野および、オンライン決済などの分野においてマーケットの拡大が予測されるという。

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