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Open RANのパイオニア企業、NASDAQに上場計画米Mavenir

Open RAN(オープン仕様の無線アクセスネットワーク)創世期の草分け的企業であるMavenir(米国テキサス州リチャードソン)は2020年10月6日(現地時間)、NASDAQにIPO(新規株式公開)と上場を申請した。

» 2020年10月16日 12時45分 公開
[John WalkoEE Times]

Open RAN向け機器のパイオニア

 Open RAN(オープン仕様の無線アクセスネットワーク)創世期の草分け的企業であるMavenir(米国テキサス州リチャードソン)は2020年10月6日(現地時間)、NASDAQにIPO(新規株式公開)と上場を申請した。

 同社は、記録的な収益の達成と利益増の発表に続いて、この計画を発表した。

画像はイメージです

 Mavenirは、米国証券取引委員会(SEC)の提出書類(Form)ではプレースホルダーとして1億米ドルを設定している。同社は、数週間前に小型セルのスペシャリストである英国のip.accessを買収したが、買収金額は明らかにしていない。

 Mavenirは既に、ソフトウェアを中心とした分散型RAN技術のポートフォリオを展開しているが、ip.accessの買収によって2G/3G(第2世代/第3世代移動通信)機能の重要なサポートが追加されることになる。

 同社はまた、エッジコンピューティングおよびパケット/音声メッセージングサービスを提供する企業にソフトウェアおよび(一部の)ハードウェアソリューションも提供している。

 設立15年の同社は、2013年にニューヨーク証券取引所に上場して以来、波乱に満ちた企業として存在感を示してきた。上場の2年後にはMitelグループに買収され、Mitel Mobileに改名したが、2017年に仮想化分野にチャンスを見いだし、BrocadeのvEPC部門を買収して非公開会社として独立した。

 Mavenirは、2020年1月に終了する会計年度に2019年会計度から8.7%増となる4億2720万米ドルの収益を計上している。前年同期からも8.7%増加しており、年間営業損失は約1000万米ドルに半減した。

 さらに同社は、IPO申請に先立ち、2020年度の上半期(7月末まで)の収益が前年同期比17%増となる2億3490万米ドルに達したことを明らかにした。同期間の営業利益は1730万米ドルで、前年同期の3660万米ドルの赤字から大きく改善した。

 米国EE Timesは、Open RAN セクターはますます重要性が高まっており、M&AやIPOの機が熟しているという見解を示してきた。

 例えば、楽天(同セクターのほとんどの競合他社とは異なり、独自のOpen RANネットワークを構築しており、同技術の開発者でもある)は最近、インドのTech Mahindraが所有する、米国の無線ソフトウェア開発企業Altiostar Networksの17.5%の株式を取得した。インドのコングロマリットでシステムインテグレーターでもあるTech Mahindraは、2018年にAltiostarの株式を取得した。Altiostar Networksにはこの他、Cisco SystemsやQualcommなども出資している。

 Mavenirは同社の持つ4G/5G(第4/第5世代移動通信) Open RAN機能に加え、ip.accessを買収したことで、約500の顧客を新たに獲得し、Parallel WirelessやAltiostar Networksなどの主要なライバルと同様に、複数世代の製品を展開できるようになった。さらに、サービスを提供する地理的エリアも大きく拡大した。

 MavenirのIPOについて注意すべき情報の一つは、Mavenirは特に2019会計年度において、収益の大部分がほんの一握りの顧客から得ていたということだ。例えばT-Mobile USは収益の約3分の1を占めていて、楽天は売上高の17%を占めている。こうした状況はどの企業にとっても不安定だ。

 2020年度上半期の売上高の71%は上位10社の顧客が占めているが、Mavenirは250社の通信事業者(そのうち17社は、世界の通信事業者のトップ20社に入っているという)にソリューションを提供していると主張する。ただ、米国の5Gネットワーキング市場への大規模な参入を計画しているDish Networksを新規顧客に迎えている点には注目すべきだろう。

 さらにMavenirは、英VodafoneからOpen RAN対応の無線インタフェースシステムを高く評価されたとしている。Vodafoneは、英国のいくつかの地域(主に地方)でOpen RANの4Gネットワークに切り替えた。Vodafoneは、MavenirのOpen RAN用無線ユニットは、RFI(無線周波数干渉)の特性において、中国のNTSと並び、「市場で最も優れたレベル」だと評しているという。

 ABI Researchは、Open RAN対応無線ユニットの市場について、2026年までに470億米ドルに達すると予測している。こうした市場予測を考慮すると、MavenirのIPOは確実ではないだろうか。ABI Researchは、2027〜2028年までに、ネットワーク事業者によるOpen RANソリューションへの投資は、従来のRANソリューションへの投資を上回るとも予測している。

Open RANの現状。現在、世界で22の通信事業者がOpen RANを商用向けに展開したと発表している 出典:iGR White Paper「Open RAN Integratin: Run With It」(クリックで拡大)

【翻訳:滝本麻貴、編集:EE Times Japan】

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