半導体製品の製造中止(EOL)が起こるとさまざまなリスクが生じることになる。その一例が、偽造品をつかんでしまうリスクだ。今回は、偽装品問題を中心に、事前に備えておきたいEOLで生じるリスクについて考える。
半導体応用機器を製造している企業の開発部門の方から、「設計者の観点から、製品開発において、品質保証対策と同等に懸念すべき項目は何ですか?」といった質問を受けることがある。このような質問に対しては、「懸念すべき項目は、製品の潜在的な継続供給年数に配慮すること」と回答することにしている。
ただ、この回答は、クラウドファンディングによる資金調達を行うプロジェクトなどのように、一度限りの製品化が最終目標である事業などのプロジェクトには当てはまらない。同様に、民生用製品のように、頻繁にモデルチェンジを繰り返すような製品は、次期モデルが現行モデルに置き換わる手法を取るため、当てはまりにくい。その一方で、上記以外のほとんどの半導体応用製品はより長い寿命を持っている。なかでも軍事および、医療、社会インフラ、産業機器などでは、一般的に価格よりも数十年にわたって安定利用できることが重要視される。しかし、高騰する交換コストや保守コストの影響は少なくないため、新しいテクノロジーによる次世代品の開発は、より魅力的なものになる可能性はある。製造中止になった半導体製品の影響により、再設計、再認証が必要になり、長く、リスクが高く、コストのかかる作業になる可能性がある。
製品の長期継続供給に対してリスク管理を実施する場合、設計者に以下のような5つの対応が推奨されている。
長期的な継続供給サポートは、早期に準備することで最適化でき、より大きな利益を生む可能性が高い。だが通常、手遅れになるまで無視されることが多い。これらの準備なしでは、必要な半導体製品が製造中止になった場合の対応として実施する再設計および、再認証のコストが高くなってしまい、本来あるべき利益を食いつぶしてしまう。しかも製造中止になる際に、今後の使用数量を正確に予測することは非常に困難である。さらには、該当する半導体製品に関する購入予算の対応や、購入後の保管についても課題が残る。数十年にわたって安定的に利用できる必要がある半導体応用製品は多くの場合、その規格に従って、既定の期間内に既定の数量を保管していることが多い。場合によっては、製造中止になったASICまたはマイクロコントローラーを置き換えるために、FPGAを利用することが理にかなっていることもある。ただし、FPGAの採用を検討する際には、ソフトウェアの互換性とともにハードウェアの電気的タイミングおよび、負荷の問題にも対処する必要がある。
さらに、半導体応用機器メーカーは偽造品について注意する必要がある。半導体部品番号としては正しくても、その製品バージョンが偽造された製品を購入する可能性もありえる。対象になる半導体製品が現行品の場合でも問題になるが、一般的に製造中止(EOL)となった半導体製品において特に偽造品による被害の発生頻度が高い。半導体製品の供給元を特定することは、仕様通りに機能するシステムを提供するためにはとても重要なポイントになる。
半導体製造、設計、研究に携わる米国企業を代表する米国半導体工業会(SIA)は、世界の半導体産業の売上高が2019年の売上高は4121億米ドルと報告。これに対し、偽造および、不適合の電子部品の世界最大のデータベースを持つERAIによると2019年に報告された不適合部品の数は、前年度と比較して18%増加し、963件であったと報告している。
また、報告された電子部品の種類も、過去10年間に報告された一般的な部品セットとは異なり、コンデンサーが最も報告された部品のトップになり、すべてのICを上回っていることが確認できた。
2019年の種類別順位は下記の通り。
順位 | 品目 |
---|---|
1位 | コンデンサー |
2位 | マイクロプロセッサ |
3位 | トランジスタ |
4位 | メモリ |
5位 | プログラマブルロジック |
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