Gelsinger氏は、Grove氏やNoyce氏、Moore氏たちが実現したIntelの全盛期時代に在籍していたが、2009年9月にIntelを去り、EMCに入社した。現在のIntelは、どのような状況にあるのだろうか。
問題は、業界の動向や市場原理、新しい技術などに関することではない。Gelsinger氏が対応すべき課題は、Intelの経営ノウハウにある。同氏は、現在のトップの補佐役のことを、どれくらい知っているのだろうか。また、Intelがこれまでに時間をかけて構築してきたさまざまなビジネスの内容をよく理解し、就任後直ちに対応することができるのだろうか。
Intelでは近々、厳しい人事が行われる可能性が高い。Gelsinger氏は、さまざまな事業やプロジェクトの中から、打ち切りやスピンオフ、売却の対象とすべきものを判断することになるだろう。また、同氏が現在CEOを務めているVMwareや、または他の企業から、新しい人材が迎え入れられるかもしれない。
最も重要なのは、同氏が、Intelの中で信頼できる人物を選ぶ必要があるという点だ。
Gelsinger氏は恐らく、自分が不在にしていた間も、IntelでCTO(最高技術責任者)を務めていた時代の同僚や信頼していた人々など、内部関係者たちといつでも連絡を取れる状態を保っていたのだろう。そのような人々とは、一体誰なのだろうか。
どの企業でも、経営陣が変わる場合は通常、このような初期段階の変化が生じる。しかし、1つだけ注意すべきなのは、Intelが、元社員だった人物を経営トップとして迎えることにより、大罪を犯してしまう可能性があるという点だ。
Gelsinger氏はかつて、Intelのスター的存在として社内外で知られていたが、良い面もあれば悪い面もある。Intelには、同氏が良好な関係を築くことができた人々もいれば、そうでない人々も存在する。同氏は、2009年にIntelを去る時に、退任の理由を明確に公には発表しなかった。そこには、同氏なりの理由があったのだろう。さらに、米国の市場調査会社であるTirias Researchで主席アナリストを務めるJim McGregor氏は、EE Timesのインタビューに応じ、「Brian Krzanich氏が2018年に、Intelにおける自身のキャリアを台無しにして退任することになった時、IntelはGelsinger氏に復帰を打診したという。しかしGelsinger氏は、その申し出を断ったと報じられている。なぜ、その時はIntelに戻らなかったのに、今になって復帰するのか、その理由は不明だ」と述べている。
これまでにどれほど多くの出来事が起こったのだろうか。そして現在もまだ続いているのだろうか。
もしGelsinger氏が、実際にIntelに復帰した際に、現在も社内に残っているかつての敵対者たちに対して長年の恨みを晴らそうと、時間やエネルギーを費やすようなことになれば、自ら移行を複雑化させてしまうことになるだろう。同氏はそのような衝動を抑えなければならない。巨大企業を新しい方向へと導いていく上で、内部抗争などのために時間を無駄にすることはできない。
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