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自動車メーカーはCANバスを捨て去る時が来るのか車載アーキテクチャの移行(1/2 ページ)

車載エレクトロニクスシステムアーキテクチャが混乱に陥っている。こうした状況は、主に二次電池式電気自動車(BEV:Battery Electrified Vehicle)の新興企業の間で約10年にわたって続いており、現在ではそのスピードが加速している。彼らは歴史的な制約やなじみがある好みの設計というものがなく、エレクトロニクスアーキテクチャを白紙の状態からスタートすることが可能なためだ。

» 2021年08月05日 10時30分 公開
[Egil JuliussenEE Times]

 車載エレクトロニクスシステムアーキテクチャが混乱に陥っている。こうした状況は、主に二次電池式電気自動車(BEV:Battery Electrified Vehicle)の新興企業の間で約10年にわたって続いており、現在ではそのスピードが加速している。彼らは歴史的な制約やなじみがある好みの設計というものがなく、エレクトロニクスアーキテクチャを“白紙(=クリーンシート)”の状態からスタートすることが可能なためだ。

 Teslaは、ソフトウェア中心型およびOTA(Over the Air)ベースのシステムアーキテクチャを採用し、エレクトロニクス設計をほとんど白紙の状態からスタートさせることの利点を示した。どの企業も、リモートソフトウェアアップデートのメリットを理解しているとみられ、自動車メーカーは現在、OTAソフトウェア導入に投資を進めているところだ。

 自動車メーカーは、ECU(電子制御ユニット)/CAN(Controller Area Network)ベースのネットワークを使用した既存の戦略を捨て去る必要性に迫られている。その代わりに、Ethernetと、いわゆるサービス指向アーキテクチャ(SOA:Service Oriented Architecture)をベースとしたエレクトロニクスシステムアーキテクチャへ移行する必要がある。そして、それは早ければ早いほど良いだろう。これは、車載エレクトロニクスのための「クリーンシートアーキテクチャ(白紙のアーキテクチャ)」と呼ぶことができるだろう。その実現には長い年月を要するとみられるが、新型モデルは全てこのアーキテクチャを採用すべきだといえる。

 本記事では、このトピックについて詳しく取り上げ、なぜ筆者が、「主要な自動車メーカーは、システムアーキテクチャ変更の流れに乗ることが重要だ」と考えるのか、その理由について述べていきたい。

クリーンシートアーキテクチャとは何か

 クリーンシートアーキテクチャとは、「利用可能な最高レベルの新技術を採用して、旧型のシステムアーキテクチャや、その制約事項、新技術と比較した場合のデメリットなどを捨て去ること」を意味する。これは、システムや設計、サプライチェーン、試験、保守、専門家、重要な各種インフラなどをベースとしたこれまでの経験を活用しなくなるため、非常に難しい決断だといえる。

 クリーンシートアーキテクチャ向けに新しいインフラを開発することにより、既存のサポート構造を置き換える必要があり、これにはかなりの期間を要することになる。このため、クリーンシートアーキテクチャは、主に新しい自動車モデルを設計する場合に用いられることになる。自動車メーカーが、優れたエレクトロニクスシステムアーキテクチャに移行するタイミングとしては、BEVへの切り替えや、さまざまな新しい設計が行われる時が最適だといえる。

 新しい自動車システムアーキテクチャが備えるべき特徴としては、「ドメインECUの周辺に構築された、あらゆるレベルのソフトウェア中心型のシステムアーキテクチャである」との見解で十分に一致している。これはつまり、API(Application Programming Interface)によって接続された、再利用可能なソフトウェアプラットフォームの階層化であり、それを全てのECUで可能な限り使用するということだ。API接続されたソフトウェアプラットフォームは、SOAと同じものである。

 SOAは、IT/クラウド業界で多用されており、さまざまなメリットを提供している。「Amazon Web Services(AWS)」や、Microsoft「Azure」の他、クラウドプラットフォームを使用しているほぼ全ての企業のための基盤を構築している。SOAが提供する数々のメリットは、車載エレクトロニクスシステムに適用することが可能だ。

 Ethernetは、車載エレクトロニクスの新しいバスアーキテクチャの選択肢の1つとされている。速度や物理的特性などの面で、さまざまなバージョンのEthernetが存在し、現在もさらに種類が増えている。これらは自動車要件の全ての要件を満たし、速度や重量、コストなどの面でさまざまなメリットを得られるはずだ。今すぐではなくても、近い将来に実現することができるだろう。

 Ethernetの主要なメリットとして、サイバーセキュリティの実装でに適した特性を備えているという点がある。Ethernetは、組み込み型サイバーセキュリティの他、将来的に全ての自動車アーキテクチャで必要とされるOTAアップデートを備えることから、選択肢の1つとされている。

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