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メモリコントローラーの未来は、まだNANDに依存新興メモリやSCMが拡大しても(2/2 ページ)

» 2021年08月12日 11時40分 公開
[Gary HilsonEE Times]
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MarvellとMicrochip

 Marvellは、商用コントローラーの会社の中でも、機能にこだわる企業だ。同社のメモリコントローラーの顧客には、Kioxia AmericaやSK hynixなどがいる。Marvellの新しい「Bravera SC5」コントローラーファミリーは、FIPS準拠のRoot of Trust、AES-256bitの暗号化技術など、クラウドデータセンターで増加し続けるSSDのワークロードに対応する機能を備える。また、PCIe 5.0とNVMe 1.4bにも対応している。

 Marvellのフラッシュビジネスユニットのマーケティング担当副社長であるThad Omura氏は、「現在のメモリコントローラーは、フォームファクターの変更やNANDの種類にも対応し、物理的、熱的、シグナルインテグリティの厳しい要件を満たす必要がある。Bravera SC5コントローラーファミリーは、ワークロードが進化し続ける中、クラウドに必要なさまざまなストレージオプションに対応できるよう、高度なカスタマイズが可能だ。つまり、MicrosoftやFacebookのようなハイパースケーラーも、SSDメーカーと同様に顧客だ」としている。

 Omura氏は、「フラッシュストレージは、ストレージとコンピュートの2つのカテゴリーで非常に健全なペースで成長している」と説明する。Marvellは、必要な全てのプロトコルでこの2つをサポートしている。しかし、ハイパースケーラーの目標の1つは、基本的に同じハードウェアを異なるアプリケーションに使用できるようにすることだ。「クラウドやデータセンター用のSSDとして発売されている製品は、ほとんどがストレージかコンピュートに特化したものだ。われわれの製品は、同じハードウェアで両方に対応できる」(同氏)

 NANDの大容量化が進む中、次世代NANDの信頼性が低下している側面があるため、ECC機能の向上も求められている。また、電源性能や熱特性の向上、「EDSFF E1.S」のような新しいフォームファクターにも対応しなければならない。Omura氏によれば、こうした新しいフォームファクターは、Dellのようなメーカーからサーバを購入するよりも自分たちで構築するようになってきているハイパースケーラーが好むという。ハイパースケーラーの中にはSSDさえも自分たちで構築し始めようとしているところもあり、Marvellはチップを直接販売することでこのような顧客をサポートし、どのフォームファクターを選択しても互換性を確保しやすいようにしているという。

 NANDベンダーの中には、コントローラーを全て製造するところもあれば、一部は自社で製造しつつサードパーティーに依頼するところもある。Omura氏は、「こうしたメーカーはロードマップの一部を最適化し、社内でソリューションを開発するリソースがない場合は、Marvellのような企業を利用することがある」と述べる。

 Handy氏は、「コントローラーが高度化するたびにコストは増えていく。ある企業は、出荷するSSDの種類ごとに独自のコントローラーを開発するコストをかけられないため、2社の顧客にコントローラーを販売しているベンダーから購入することにした。これによって2社分のSSDの開発費を賄うことができた」と話す。

Microchip Technologyは、高信頼性、高性能のPCIe Gen 4 SSD向けに「Flashtec NVMe」コントローラーを提供している 出典:Microchip Technology

 Microchip Technology(以下、Microchip)は、NANDベンダーが自社製品を持っていても、Microchipのコントローラーで補完したいと考えている場合に、SSDコントローラーを提供している。Microchipのデータセンター事業部のディレクターであるMark Orthodoxou氏は、「カスタム要件やコスト削減のために、より多くの独自のデータストレージインフラを構築したいと考えているハイパースケーラーのような企業にも役立っている。SSDコントローラーの設計は非常に難しいため、当社はSSDサプライヤーと多くのビジネスを行っている」と述べる。

 Microchipは、現在PCIe Gen 4製品を提供しており、それ以降のロードマップもあるため、エンタープライズSSDおよびNVMe SSD向けのコントローラーに注力している。一方で、新興メモリ用のコントローラーに関するロードマップはない。Orthodoxou氏は、「SCMで成功する製品があるとは考えていない。IntelのOptaneベースのSSDも大きく失敗している」と指摘。NVMeインタフェースでSCMを接続することにはほとんど意味がないとの見解を述べた。

 同氏は、「今後は、SCMがCXL(Compute Express Link)に対応し始め、そこが成功の舞台となるだろう」と述べている。Microchipは、記録密度と容量を効率的に向上させるSMR(Shingled Magnetic Recording)や、SATAとSASの両方に投資している顧客のための長期的なエコシステムの実現など、SSDとともにHDDの進化にも注力している。

 MarvellのOmura氏によれば、同社はSCMには注目しているが、コントローラー企業にとって十分な市場になるまでにはまだ長い道のりがあるとみている。3D Xpoint市場から撤退したMicronに代わり、SCM製品を強力に推進しているのはIntelだけだが、SCMのインタフェースについてはさらなる標準化を進める必要がある。Omura氏は、「とはいえ、SCMをサポートするコントローラーがないわけではない。われわれは非常に注目している」と述べる。その間にもCXLが市場で存在感を増しており、Marvellも積極的に参加している。「われわれは、CXLがまずDRAMに焦点を当て、最終的にはSCMを統合する能力があると考えている」(同氏)

【翻訳:滝本麻貴、編集:EE Times Japan】

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