SSD接続規格である「NVMe(Non-Volatile Memory express)」が次のレベルへと移行する準備を整えつつある。NVM Expressは2021年6月、「NVMe 2.0」の仕様を発表した。
SSD接続規格である「NVMe(Non-Volatile Memory express)」が次のレベルへと移行する準備を整えつつある。NVM Expressは2021年6月、「NVMe 2.0」の仕様を発表した。
NVMe 2.0は、前世代との後方互換性を維持しつつ、デバイス環境の多様化が進む中でさらなる開発の迅速化と簡素化を実現できる。NVM Expressのプレジデントを務めるAmber Huffman氏は、「NVMeを再構築することにより、未来のストレージに対する需要の進化に対応することができる。また、ZNS(Zoned Namespaces)やKV(Key-Value)などの個々の命令セットの開発を推進する他、NVMeに共通するさまざまな種類の基本的な転送プロトコルをサポートしていく。さらに現在、『NVMe-oF(NVMe over Fabrics)』の完成も間近に迫っている」と述べている。
ワーキンググループとして始動した団体は今や、規格ライブラリを保有する本格的な組織となった。規格ライブラリは、基礎仕様や命令セット、転送、管理インタフェース規格などの複数のドキュメントで構成されている。NVMeデバイスエコシステムは、エンタープライズおよびクライエント用SSDや、リムーバブルカード、演算アクセラレーター、HDDなど、幅広く網羅する。
NVMe 2.0の数々のアップデートの中でも、ZNS Command Set仕様は、Zoned Storageデバイスインタフェースを提供し、データをSSDの物理メディアに配置できるよう許可することで、SSDとホストを連携させてデータ配置を行うことができる。これにより、デバイスの全体的な性能向上とコスト削減が可能になるという効果をもたらすとともに、容量を増加させてホストで利用できるようにすることが可能だ。
Technical Work Group(TWG)の議長を務めるPeter Onufry氏は、「NVMeに新しい命令セットが追加されたことで、さまざまな種類のネームスペースが必要になった。NVMe 2.0のZNSは、複数の命令セットをサポート可能なアーキテクチャを実現することができる」と述べている。
Samsung Electronicsは2021年6月、ZNSに対応したエンタープライズ向けのSSD「PM1731a」を発表した。ZNSに対応することで、利用可能なユーザー容量を最大化し、ストレージサーバやデータセンター、クラウド環境などにおいて寿命を延ばすことが可能になったという。
ZNSは、利用頻度やアクセス頻度に基づいてデータをグループ化し、SSD内部の独立したゾーンに連続的に保存するため、ドライブの書き込み効率(WAF:Write Amplification Factor)を低く抑えることができる。Samsungによると、書き込み動作数を大幅に削減することでSSDの効率を高め、寿命を既存のSSDの約4倍に延ばすことが可能になるという。そのため、サーバインフラ向けに、より環境に優しい持続可能な選択肢を提供できるとした。
NVMe 2.0は、SSDの寿命延長に加え、「Endurance Group Management」機能も追加されているため、SSDへのアクセス精度を明示して制御を改善することにより、メディアをEndurance Groupsに設定することが可能だ。「Endurance Group Managementでは、複数の不揮発メモリプールを作成し、それらのプールからネームスペースを作成することができる」とOnufryk氏は説明する。
NVMe 2.0のもう一つの大きな特徴は「KV Comman Set」だ。これは、ブロックアドレスではなくキーを使ってNVMe SSDコントローラー上のデータにアクセスする機能である。これにより、アプリケーションはKVを使ってドライブと直接やりとりすることができ、キーと論理ブロックの間の変換テーブルのオーバーヘッドをなくすことが可能だ。
NVMe 2.0ではHDDのサポートも可能になる。HDDのサポートに必要な機能がアップデートされている。Onufryk氏は、「NVMeを開発した当初、われわれは不揮発メモリのみをターゲットとしていた。当時はNAND型フラッシュメモリだけではなかったが、まさかHDDをNVMeで接続したいというニーズがあるとは想像もしなかった」と語る。「SCSI(Small Computer System Interface)がPCI ExpressやNVMeに対して置き去りにされていく中で、引き続きHDDもサポートする方法が必要だ」(同氏)
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
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