東芝は、エネルギー変換効率が15.1%という、世界最高レベルのフィルム型ペロブスカイト太陽電池を開発した。「1ステップメニスカス塗布法」と呼ぶ新たな成膜法を開発することで実現した。
東芝は2021年9月、エネルギー変換効率が15.1%という、世界最高レベルのフィルム型ペロブスカイト太陽電池を開発したと発表した。「1ステップメニスカス塗布法」と呼ぶ新たな成膜法を開発することで実現した。
フィルム型ペロブスカイト太陽電池は、軽量薄型で柔軟性に優れるため、建屋の窓などさまざまな場所に設置することが可能である。東芝は2018年に、独自のメニスカス塗布印刷技術を用い、受光部サイズが約703cm2(24.15×29.10cm)で、エネルギー変換効率が14.1%のペロブスカイト太陽電池モジュールを開発している。今回は、このサイズを維持しながら、成膜プロセスの高速化と高い変換効率の実現を目指した。
ペロブスカイト層の成膜プロセスを、従来の2段階から、今回は1段階で行うことにした。これまで同社が採用してきた2ステップ手法は、まず基板上にヨウ化鉛(PbI2)膜を形成。その上から、ヨウ化メチルアンモニウム(MAI)インクを塗布することで、ヨウ化鉛メチルアンモニウム(MAPbI3)膜を形成していた。1ステップでMAPbI3インクを塗布する手法はこれまでもあったが、従来手法だとMAPbI3結晶の成長を制御するのが容易ではなく、大きな面積に対して均一に塗布することが極めて難しかったという。
そこで東芝が新たに開発したのは、MAPbI3結晶の成長を制御できる、1ステッププロセスのメニスカス塗布法である。MAPbI3インクや乾燥プロセスおよび、装置を新たに開発することで、大きな面積でも均一に塗布することが可能となった。塗布速度は毎分6mのスピードを達成している。均一性にも優れ、703cm2のモジュールでありながら15.1%のエネルギー変換効率を実現した。
東芝は今後、受光部サイズが900cm2など、さらなる大面積化に取り組むとともに、エネルギー変換効率として20%以上を目指す。これによって、ペロブスカイト太陽電池の製造コストを、ワット当たり15円としたい考えである。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.