東芝は、スイッチング損失を全体で最大40.5%も低減できる「トリプルゲートIGBT」を開発した。再生可能エネルギーシステムや電気自動車(EV)などに搭載される電力変換器の高効率化に向けて、早期実用化を目指す。
東芝は2021年6月、スイッチング損失を全体で最大40.5%も低減できる「トリプルゲートIGBT」を開発したと発表した。再生可能エネルギーシステムや電気自動車(EV)などに搭載される電力変換器の高効率化に向けて、早期実用化を目指す。
IGBTは高耐圧のパワー半導体で、さまざまな電気機器の電力変換器に採用されている。このため、主要デバイス各社は電力損失の大幅な低減に向けて、素子構造の改良などに取り組んでいる。しかし近年は、性能改善も大きくは進展していなかったという。
東芝は今回、3つのゲート電極を備えた新構造のシリコンIGBTと、これらゲート電極のオン/オフ切り替えを高精度に行うゲート制御技術を開発した。トリプルゲートIGBTは、メインゲート(MG)と第1コントロールゲート(CGp)および、第2コントロールゲート(CGs)を同一チップ内に設けており、これを独立に駆動させる。
具体的な制御方法はこうだ。ターンオン時はMGとCGpに対して、CGsを遅延させるようゲートを制御する。これによって、3つのゲート電極は同時に「オン」となる。それでIGBT内には大量の電子とホールが高速に注入/蓄積されることでスイッチング時間が高速化し、ターンオン損失を低減する。
ターンオフ時は、CGsをオフ状態としてMGに対しCGpを先に「オフ」させる。これによって素子内部の電子とホールを減少させる。この結果、IGBTが完全にターンオフする時は電子とホールが高速に消滅し、ターンオフ損失を低減できるという。
トリプルゲートIGBTとゲート制御技術を組み合わせることで、ゲート電極が1つしかないIGBTに比べて、ターンオン損失を50%、ターンオフ損失を28%、それぞれ削減。全体ではスイッチング損失を最大40.5%低減することに成功した。
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