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光トランシーバーのForm Factorの新動向(7) 〜CPOの最新動向光伝送技術を知る(18) 光トランシーバー徹底解説(12)(2/3 ページ)

» 2021年10月01日 11時30分 公開
[高井厚志EE Times Japan]

CPOの実用化と消費電力

 CPOの実用化時期は、さまざまな機会に話題となっている。将来のハイパースケールデータセンターにおける消費電力限界から、CPOへの移行が必要というシナリオが語られている。

 開発期間とFP Pluggableの予測から、先に述べたように1.6T(2x800G)まではFP Pluggableが可能であるというコンセンサスが形成されつつある。このため、ことし(2021年)2月に発表されたCPO CollaborationのRequirement(Specifications)は3.2Tであり、OIFで規格化が始まった。

 前述したように、ハイパースケールデータセンターでは、Leaf-Spine間ファイバーと電源・冷却系などのインフラを20年使用する。つまり、既存のクラウドデータセンターの電力や冷却能力は、既に設置された電源・冷却系で制限され大きく変わらないという前提なのだ。追加の設備投資は、回収が困難といわれている。

 ということは、20年間同じ電力と冷却能力で運用しなければならない。「ムーアの法則」によって高性能化するサーバの消費電力は増加していくので、Computeを最大化するには、その他の電力を削らなければならない。

 2020年10月のLightwave/OIFのWebinarでFacebookのRob Stone氏が示したIT関連電力の次世代(Next Generation)予測では、ネットワークの電力が増加する分、IT/サーバの電力を低減しなければならない。また、CiscoはLine Cardの消費電力が増えると冷却に要する電力が非線形的に増加することを指摘している。

図3:ネットワークの消費電力の増加が、サーバ電力を圧迫するという予測[クリックで拡大] 出所:Lightwave/OIFのWebinar Facebook Rob Stone氏の講演資料

 CPOの効能で、第一に低消費電力が挙げられるのはこのためである。

 サーバは消費電力当たりの性能が向上し、消費電力の増加に伴い台数が減っても総計算能力を上げることはできるが、ネットワークでは、サーバの数が減っても高速化による消費電力が増加したスイッチの台数は比例して削減できない。このため、限られた電力の中でネットワークの割合が大きくなっていくのである。

 Facebookは光トランシーバーの電気インタフェースを”-XSR”にすることで、双方のインタフェース回路の消費電力が下げられるとしている。図4は、図3と同じFacebookの講演公開資料から引用したが、右のバーで示される51.2Tスイッチでは、CPOを使用することで消費電力が低減できることを示している。

図4:Facebookにおけるスイッチにおける電力推移とCPOによる改善[クリックで拡大] 出所:Lightwave/OIFのWebinar Facebook Rob Stone氏の講演資料

 図にも示されているが、現在のスイッチICはトランシーバーのインタフェース”-VSR”だけではなく、DAC(Direct Attach Cable)という数メートルの電気ケーブルが使用できる”-LR”をサポートしている。これは40%の電力増加を伴うといわれている。”-XSR”に統一すれば、消費電力は低減できる。

 だが、これには異論もある。図4の右から2番目のグラフを見ると、黄緑色のスイッチICの”-LR”電力が空色のトランシーバーの”-VSR”電力より大きいことが分かる。スイッチICのインタフェースを”-VSR”にしても、消費電力は”-XSR”程度に大幅に削減できる。ネットワークが高速になり全てを光トランシーバーにすれば”-LR”は不要になり、”-VSR”にするだけで相当の電力低減が可能だといわれている。また、それに関連して「XSR+」という、”-VSR”と”-XSR”の中間に相当する新しい低消費電力のCEIインタフェースの規格化が検討されており、CPOの必然性は消費電力だけでは語れなくなっている。

 長年、光トランシーバー市場に身を置いていたので、トランシーバーの電力が毎年のように低減されるのを目の当たりにしてきた。Open Eye MSAではDSP-freeで低消費電力、低レイテンシな50G PAM-4のCDR(Clock and Data Recovery)の開発に成功している。近い将来、100G PAM-4もDSP-freeになり、消費電力が低減されるのも遠くないかもしれない。電気インタフェースの電力も大事だが、伝送に関わるオプティクスの消費電力低減に関する議論も進めるべきである。

 実際、図4で赤で示されているオプティクス(Optics)の電力も低減されていることが分かるが、CPOの方が、FP PluggableよりOpticsの電力が下がる理由は不明である。冷却環境や、シリコンフォトニクスにおけるドライバー信号のインピーダンスの違いなどが考えられる。

 しかし、このように、データセンターの消費電力低減だけがCPOを推進するとの想定だけでは、CPOは進展しないと考える。実際にMicrosoftは、CPOのメリットは電力低減だけではないと言っている。

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