図3に、iPhone 13 Proの基板を示す。基板には放熱用のシートがあちこちに貼られており、熱対策も十分に行われている。基板の一部に「A15 BIONIC」のステッカーが貼られているのもiPhone 13の特徴だ。従来製品の基板にプロセッサ型名のステッカーは貼られていなかった。ただし、A15 BIONICのステッカーは、プロセッサではなくNAND型フラッシュメモリの上に貼られているのだが。
ステッカーをはがすと裏面には放熱用のシートが付いている。ステッカーは見栄えのためではなく、放熱材として使われているわけだ。だが、このステッカーは分解すると真っ先に目に入る。弊社のみならず多くのメーカー、団体、個人がiPhone 13を分解している。Appleは分解されることを前提に「A15 BIONIC」というステッカーを貼ったのかもしれないと想像しながら、分解を行った。
いずれにしても分解されるとは、それだけ興味を持たれていることともいえるだろう。分解の対象(弊社にカスタム依頼含む)とならない機器は、そもそも注目されていないからだ。分解されなくなったら終わりなのかもしれない。
図4は、iPhone 13 Proの基板を分解した様子である。基板は2階建て構造になっている。この構造はiPhone Xから採用されていて、機能によって1階と2階に分かれている。
“2階部分”には信号処理を行うプロセッサ、ストレージメモリ、電源を制御するためのパワーマネジメントICなどが設置されている。“1階部分”には通信処理を行うチップ群が主に配置されている。2階にも一部通信のフロントエンドチップが配置されているが、処理内容を分離することで信号処理と通信処理という異なる特性を最適化するように設計されているわけだ。
1階と2階はスペーサーで接続されており、いわゆるエレベーターの役割を担っている。基板のチップ上には金属のシールド処理や熱伝導シート、放熱ジェル塗布などの処理が施されており、放熱対策、ノイズ対策などが十分に施されている。
日本未発売のミリ波モデルにも共通の基板を使えるように、ミリ波用のトランシーバーやアンテナを設置する場所もリザーブされている。図4中、1階部分の基板に示した赤丸部がそれだ。日本で発売されたiPhone 13では、この部分には何も無い空チップが搭載されている(米国版のミリ波モデルは現在別途解析準備中)。
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