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» 2021年10月13日 11時30分 公開

全機種に“最適化した設計”、「iPhone 13」分解に見るAppleの開発力この10年で起こったこと、次の10年で起こること(56)(3/3 ページ)

[清水洋治(テカナリエ),EE Times Japan]
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「集中制御構造」が進むApple製品

 図5は、メイン基板の2階、信号処理側基板の接続関係の様子である。1階の通信側基板は外部との通信を行うだけの構成なので接続端子は存在せず、スペーサーを介して2階と接続されるだけとなっている。iPhone 13内部のカメラ、電池など多くの部位との接続は全て2階基板で行われる。

図5:iPhone 13 Proのコンピュータ基板は、“集中制御構造”[クリックで拡大] 出所:テカナリエレポート

 図5中央の赤矢印の場所にはストレージ用メモリがあり、ここに「A15 BIONIC」のステッカーが貼られている。基板は、ほぼ全方位からさまざまな信号が接続されている。いわゆる集中制御構造だ。基板に入った信号はほぼ全てが、メインプロセッサのA15 BIONICにつながっている。

 現在弊社では基板の各層分解や断面解析なども進めているところである。今後のコンピュータの進化は、半導体製造プロセスノードの微細化により、1つのプロセッサにより多くの機能、回路が搭載できるようになるので、さらに集中制御が進むものと思われる。

 Apple製品は「Mac」でもスマートフォンでもタブレットでも、集中制御が極めて進んでおり、そのため基板を小型できているという特長もあるわけだ(当然ながら通信処理と信号処理を1チップ化しているQualcommやMediaTek、Samsung Electronicsでも、若干異なる構成にはなるが集中制御は著しく進んでいる!)。2021年後半に発売されるGoogle「Pixel 6」の分解では、Apple製品との基板構成比較を主眼の1つに置いて分解を進めていく予定だ。

 図6は、4機種のiPhone 13に共通して採用されているプロセッサおよびプロセッサと組み合わされるチップである。

図6:iPhone 13シリーズ4機種に共通して搭載されているプロセッサ[クリックで拡大] 出所:テカナリエレポート

 左側は5G(第5世代移動通信)通信用のベースバンドプロセッサとトランシーバー。Qualcommの最新プロセッサ「Snapdragon X60」が採用されている。右側は信号処理を担うA15 BIONICとA15の電源制御用チップ(Apple製)である。ともにチップセットとなっており、組み合わせることで機能を実現する構成となっている。全チップの開封解析を行っており、次回の本連載でチップ開封の一部結果を掲載する予定である(詳細を知りたい方は弊社にお問い合わせください)。

iPhoneに搭載されている全プロセッサ

 表1に、2007年の初代iPhoneから、15代目となったiPhone 13まで、メインプロセッサと通信プロセッサの概要をまとめた。「iPhone 8」など省略されている機種も一部あるが、プロセッサについてはA15 BIONICまで全て網羅している。

 弊社は初代から最新のiPhone 13まで全機種を持っており(全てについて、基板、電池など部品ごとに整理し、プロセッサは全て開封して解析している)、iPhoneの歴史がチップレベルで分かるようになっている。

表1:初代iPhoneからiPhone 13までのカメラ、プロセッサ、ベースバンドプロセッサの情報[クリックで拡大] 出所:テカナリエレポート

 弊社は、Appleのみならず、他のメーカーの製品についても継続的に分解調査を行っている。“機種の歴史”を観察することで、変化の周期や、今後の方向性が見えてくることも多々ある。いずれこの辺りの話についても、本シリーズで触れていきたい。


執筆:株式会社テカナリエ

 “Technology” “analyze” “everything“を組み合わせた造語を会社名とする。あらゆるものを分解してシステム構造やトレンドなどを解説するテカナリエレポートを毎週2レポート発行する。会社メンバーは長年にわたる半導体の開発・設計を経験に持ち、マーケット活動なども豊富。チップの解説から設計コンサルタントまでを行う。

 百聞は一見にしかずをモットーに年間300製品を分解、データに基づいた市場理解を推し進めている。


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