メディア
パワーエレクトロニクス最前線 特集
特集
» 2021年11月11日 11時30分 公開

電気自動車への移行を後押しするSiC技術EV向けの開発、生産が拡大

Wolfspeed(旧Cree)は2021年10月、同社の社名変更と同時に、大規模なデザインウィンを獲得したことを発表した。同社は、電気自動車(EV)向けSiC(炭化ケイ素)半導体の開発および生産に関して、GM(General Motors)とサプライチェーン契約を結んだ。2021年8月には、STMicroelectronics(ST)との複数年契約を拡大し、150mmのベアおよびエピタキシャルSiCウエハーの供給に関する8億米ドルの契約を結んでいる。

[Majeed Ahmad,EE Times]

 Wolfspeed(旧Cree)は2021年10月、同社の社名変更と同時に、大規模なデザインウィンを獲得したことを発表した。同社は、電気自動車(EV)向けSiC(炭化ケイ素)半導体の開発および生産に関して、GM(General Motors)とサプライチェーン契約を結んだ。2021年8月には、STMicroelectronics(ST)との複数年契約を拡大し、150mmのベアおよびエピタキシャルSiCウエハーの供給に関する8億米ドルの契約を結んでいる。

「次世代のパワー半導体をけん引するのはSiC技術」

 どちらの契約も、将来的に自動車業界が完全な電気自動車に移行すれば、SiC技術が重要な役割を果たすことをはっきりと示している。フランスの市場調査会社Yole Développementでパワー&ワイヤレス部門のディレクターを務めるClaire Trodec氏によると、SiCベースのパワー半導体は、EVユニットあたりのバッテリーコストを最大750米ドル削減できるという。

 Creeは過去にLED事業を売却しているが、Wolfspeed部門の名称を採用した現在は、SiCパワー半導体に賭けている。同社のCEO(最高経営責任者)を務めるGregg Lowe氏は、「これが当社の形だ」と述べ、「次世代のパワー半導体をけん引するのはSiC技術だ」と断言した。

 米国ノースカロライナ州ダーラムに拠点を置くWolfspeedは、2022年初頭からニューヨーク州マーシーの200mmウエハー工場でSiCパワー半導体を生産する計画だという。このMohawk Valley工場は、同社が10億米ドルを投じた世界最大のSiC生産ラインである。

 現在、世界的な半導体不足が大きく報じられているが、Wolfspeedは数年前からSiCの生産能力を拡張している。

 STも、ICサプライチェーンの混乱を予想しており、今回の半導体不足が起こる前に、需給ギャップを埋めるためSiCウエハーの長期契約を結んでいる。STは、WolfspeedとのSiCウエハー供給契約のほかに、ローム傘下のウエハーメーカーであるドイツSiCrystalとも同様の契約を結んでいる。さらに2019年には、スウェーデンのSiCウエハーメーカーであるNorstelを買収し、200mmウエハーの研究開発を開始している。

 一方、他のSiC企業も、EV設計におけるSiCデバイスの将来的な需要を見越して、ウエハー供給契約を進めている。例えばドイツInfineon Technologies(以下、Infineon)は、2017年にCreeのWolfspeed事業の買収に失敗した後、CreeとSiCウエハーの供給に関する複数年契約を結んだ。同社は、日本のウエハーメーカーである昭和電工とも、SiC材料とエピタキシー技術に関する契約を結んでいる。

 Infineonは当時、「SiCパワー半導体市場は今後5年間で毎年40%成長する」と予測していた。実際に、SiCパワー半導体は400〜800V、さらにそれ以上のシステムに広く採用され、SiCを手掛ける主要企業の成長を後押しした。

EVの電源設計とSiC半導体は相性が良い

 STと、2018年に発売された「Model 3」にSiCパワー半導体を先駆的に搭載したEVメーカー、Teslaの供給関係を考えてみよう。業界の報道によると、STは、Model 3のトラクションモーター向けのパワーモジュールに使用されるSiCのサプライヤーだった。System Plus Consultingの製品分解レポートによると、パワーモジュールにはSTのSiC-MOSFETが搭載されていたという。

Teslaの「Model 3」に搭載されているインバーターは、24個のパワーモジュールで構成されており、各モジュールには2個のSiC-MOSFETが搭載されている

 2021年になり、半導体不足が自動車メーカーのサプライチェーンに深刻な影響を与える中、TeslaとのSiC供給契約は安定しているようだ。

 つまり、EVの電源設計とSiCパワー半導体は相性が良いということだ。トラクションインバーター以外にも、OBC(オンボードチャージャー)やDC-DCコンバーターにSiCパワー半導体が使われている。例えばSTは、ルノー・日産・三菱自動車アライアンスや中国のEVメーカーBYDと提携し、OBCにSiCパワー半導体を供給している。

【翻訳:滝本麻貴、編集:EE Times Japan】

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

RSSフィード

公式SNS

All material on this site Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
This site contains articles under license from AspenCore LLC.