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ASML、2022年の売上高は前年比20%増を見込むベルリン工場火災の影響は軽微

ASMLは、半導体メーカーがムーアの法則を継続していく上で使用するEUV(極端紫外線)リソグラフィ装置の、唯一のサプライヤーである。同社は、自社のベルリン工場で最近発生した火災によるダメージを払拭することができたとして、2022年の売上高が約20%増加するとの見方を示している。

» 2022年01月27日 10時30分 公開
[Alan PattersonEE Times]

 ASMLは、半導体メーカーがムーアの法則を継続していく上で使用するEUV(極端紫外線)リソグラフィ装置の、唯一のサプライヤーである。同社は、自社のベルリン工場で最近発生した火災によるダメージを払拭することができたとして、2022年の売上高が約20%増加するとの見方を示している。

 ASMLのCEO(最高経営責任者)であるPeter Wennink氏は、2022年1月に行った四半期業績発表の場で、「われわれは、状況にうまく対処できたと確信している。当社の2022年におけるEUV装置生産に重大な影響が及ぶことはないとみられるため、前年比約20%増の成長を見込んでいる」と述べている。

 ASMLは2021年第1四半期に、Intelから、最新の量産対応EUV装置「Twinscan EXE:5200」の最初の発注を受けたという。Twinscan EXE:5200は、開口率(NA)が0.55の高NA EUV装置だ。2024年の出荷開始を見込んでいる。ASMLは、「半導体メーカーはTwinscan EXE:5200を使用することにより、今後10年の間に、現時点での限界とされている2nmプロセスを超える微細化を実現できるようになるだろう」と述べる。

 EUVと旧型のDUV(深紫外線)リソグラフィ装置は、ASMLの売上高全体の約半分を占めている。ASMLは、Intelをはじめ、最先端プロセス技術を適用した製造を行っているファウンドリー各社にEUVツールを供給している。例えば、TSMCやSamsung Electronicsの他、Micron TechnologyやSK hynixなどのメモリチップメーカーが挙げられる。

 ASMLは、レガシーノードで半導体チップを製造するメーカーにDUV装置を供給している。こうしたメーカーの多くは現在、半導体不足のために工場を一時閉鎖した自動車メーカーやエレクトロニクスメーカーなどからの需要に、急いで対応しようとしているところだ。

 Wennink氏は、「DUVが特に強いのは、メモリやロジックなど、あらゆる業界全体に対応可能であるという点だ。誰もが知る半導体不足によって、需要が急増している」と述べる。

かつてないレベルの需要

 Wennink氏は、「これまでにない規模の需要が、われわれの能力を大幅に上回る勢いで増大している」と付け加えた。

 「需要急増の要因としては、IoT(モノのインターネット)デバイスに搭載される半導体チップの需要が高まっていることの他、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックの影響が長引いていること、半導体不足が続いていることなどが挙げられる」(Wennink氏)

 ASMLは現在フル稼働の状態にあり、それが同社にとっての懸念要素になっているという。

 「生産能力を最大限に利用している場合、いかなる混乱も生じないよう十分に注意を払い、監視する必要がある。もし混乱が発生すれば、その衝撃を和らげる余裕がないためだ」(Wennink氏)

 同社は2021年に、全力で需要に対応すべく、新たに約6000人を雇用した。これは、全従業員3万1000人の約20%に相当する。

 Wennink氏は、混乱の一例として、同社のベルリン工場で最近発生した火災について取り上げ、「数時間で消火することができたが、それでも重大なダメージを被った」と述べている。「DUVについては、当初の混乱はあったものの、2022年の生産量には大きな影響はないとみている」(同氏)

 火災は、ASMLがEUV用ウエハークランプを製造している場所で発生した。同社は、EUVツールの生産に大きな影響はないとの見通しを示した。

 ASMLは2021年、EUVの開口数(NA)を従来の0.33NAから0.55NAに高めた新しい装置(高NAのEUV装置)を2023年前半に顧客に提供する計画だと発表した。

 Twinscan EXE:5200の顧客であるIntelは、2018年に高NA EUV装置のプロトタイプである「Twinscan EXE:5000システム」も発注していた。Intelは、2025年に高NA EUV装置を導入した製造を開始する予定だ。

 半導体製造装置に対する需要が急増する中、Winnink氏は、半導体の世界市場が10年後までに現在の2倍である1兆米ドルに達すると予測している。「われわれは長期的な成長規模を過小評価していたようだ。こうした成長予測に追い付くためには、生産能力を増強することだ」(同氏)

【翻訳:田中留美、編集:EE Time Japan】

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