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» 2022年01月21日 12時00分 公開

2050年までの世界半導体市場予測 第3弾 〜30年後もスイートスポットは28nmか湯之上隆のナノフォーカス(46)(1/5 ページ)

収束のメドが立たない半導体不足。本稿では、特に足りないのは28nmの半導体であることを以下で論じる。さらに本稿の最後に、1年前にも行った「2050年までの世界半導体市場予測」を再び試みたい。

[湯之上隆(微細加工研究所),EE Times Japan]

コロナ禍で起きた半導体不足

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 新型コロナウイルスは、アルファ株からデルタ株へ、そしてオミクロン株へと変化を遂げており、世界保健機関(WHO)のハンス・クルーゲ欧州地域事務局長は2022年1月11日、今後6〜8週間で欧州の人口の過半数が感染する可能性があると警告した(日経新聞1月12日)。

 コロナの奴は、強毒化すると宿主である人間が重症化したり死んでしまったりするので、弱毒化する代わりに感染力を飛躍的に大きくする戦略に打って出たようである。コロナとの付き合いも既に2年目になるが、まったく厄介なウイルスである。

 ここまで感染力が強いのなら、いっそのこと「感染してもまったく無症状で78億人の全人類が(知らない間に)感染している」ようになってくれないか。いやもっというと、「感染すると記憶力が良くなる」とか、「人に対して優しくなる(→その結果、世の中から戦争がなくなる)」というような症状が出るようにしてくれないか、「頼むよ、コロナさん」などと思ってしまう。

 しかし、そのコロナのせいで、リモートワークやネットショッピングが急拡大し、PC、各種電子機器、ゲームなどが爆発的に売れた。その結果、世界的な半導体不足が起きてしまった。

 その半導体についても、足りているものもあれば、本当に足りないものもある。それは斑模様のようになっているようだ。そして特に足りないのは、28nmの半導体であることを以下で論じる。さらに本稿の最後に、1年前にも行った「2050年までの世界半導体市場予測」を再び試みたい。

スイートスポットは16nm?

 2021年12月15日〜17日の3日間、東京ビッグサイトで、日本最大の半導体のビジネスイベント「SEMICON Japan」が開催された。筆者は、Semi Technology Symposium(STS)の「先端材料・構造・分析セッション」で、『日本の装置と材料の競争力とその源泉』について元Intelの亀和田忠司と共同発表を行った(概要は「半導体製造装置と材料、日本のシェアはなぜ高い? 〜「日本人特有の気質」が生み出す競争力」の記事を参照)。

 STSのスピーカーは、全てのセッションに無料で参加できる。そこで筆者は、ほぼ全てのセッションに参加してセミナーを聴講した。その中で、「SEMIマーケット」というセッションで、マッキンゼー・アンド・カンパニーの土谷大氏の『半導体産業におけるサプライチェーンダイナミクスについて』を聞いて相当驚いてしまった。

 というのは、土谷氏はセミナーの中で、「(ファウンドリーの)半導体製造コストの観点では、16nmノードがスイートスポットになる可能性が高い」と説明したからだ。筆者はこのときZoomウェビナーで参加していたので、チャットで「ファウンドリーにおけるスイートスポットは16nmではなく28nmだと思いますが?」と書き込んだ。するとSEMIの事務局から「質問はできないということになっています」という回答が来た。そこで、筆者は「通常これはおカネを払って参加するシンポジウムなんですよね? だったら質問に答えてもらいたいです」と書き込んだ。SEMIの事務局は、「発表者にその質問を伝えます」と回答した。しかし、約1カ月過ぎた1月16日時点で、マッキンゼーから何も回答はない。

 SEMIの事務局が質問を土谷氏に伝えなかったのか、あるいは伝えたけれど質問は無視され握りつぶされたかのどちらかであろう。いずれにせよ、筆者は不満である。そこで、以下では「ファウンドリーにおけるスイートスポットは16nmではなく28nmである」ことを実証する。

コロナのニューノーマルで売れたものは何か

 2020年にコロナの感染が世界に拡大し、2021年には、人々の生活を大きく変えてしまった。それは、ニューノーマル(新しい生活様式)といわれるようになった。2021年6月に行われたTSMC Technology Symposiumによれば、次のような具体例がある。

  • ネットショッピングでは、8週間で、10年分を売り上げた
  • リモートワークを行う人は、3カ月で、20倍に増加した
  • オンライン学習は、2週間で、2億5000万人に拡大した
  • オンラインゲームは、5カ月で、7年分がダウンロードされた

 そして、このニューノーマルの定着により、各種の電子機器が爆発的に売れた。図1は、2021年と2022年における各種電子機器の対前年の出荷台数の増減(%)を示している。

図1:各種電子機器の出荷台数の対前年成長率(YoY%)[クリックで拡大] 出所:Joanne Chiao(TrendFore),“Wafer Shortages Drives the General Growth of Foundry Capacity in 2022”,Memory Trend Summit 2022“の発表を基に筆者作成

 例えば、リモートワークやオンライン学習に必要不可欠なノートブック(PC)は、2020年に比べて2021年は16.5%出荷台数が増えた、ということが分かる。しかし、ことし2022年は、2021年に比べると出荷台数は7.2%減少する予測となっている(といっても想定外のオミクロン株が大流行しているため、この予測は外れるかもしれない)。

 このように図1を見ると、コロナ禍でロックダウンや緊急事態宣言が出されてステイホームを余儀なくされた2021年は、ノートブック(16.5%)、ゲームコンソール(35%)、ウェアラブルデバイス(11.1%)などが、非常に売れ行きが良かったことが分かるだろう。

 すると、これらの電子機器に使われる半導体の需要も急拡大することになった。では、その中で特に、需要が集中した半導体は何か?

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