半導体不足はいまだに続き、解消のメドは立っていない。それどころか、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の収束も見えず、ロシアによるウクライナ侵攻が発生するなど、半導体関連のサプライチェーンが不安定になる要素は増えている。それに伴って、半導体製造の“自国回帰”の動きが進み、半導体への投資は加速している。こうした状況は、ハイテク関連のベンチャー企業にどのような影響を与えているのだろうか。
半導体不足はいまだに続き、解消のメドは立っていない。それどころか、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の収束も見えず、ロシアによるウクライナ侵攻が発生するなど、半導体関連のサプライチェーンが不安定になる要素は増えている。それに伴って、半導体製造の“自国回帰”の動きが進み、半導体への投資は加速している。
こうした状況は、ハイテク関連のベンチャー企業にどのような影響を与えているのだろうか。米国のベンチャーキャピタルPegasus Tech Venturesの創設者兼CEOを務めるAnis Uzzaman氏は、「プラスとマイナスの両方の影響がある」と述べる。
プラスの面としては、半導体への投資加速が追い風となり、半導体関連のスタートアップが急増していることだ。特に中国ではこの動きが顕著だという。
Uzzaman氏は、「半導体は低迷に向かっているとされる分野だったが、今ではスターのような存在になっている。リモートワークの急増や自動車分野での半導体不足など、COVID-19の影響で半導体の存在意義が高まり、これが新しい追い風となって、ハイテクベンチャーの創設が後押しされている気配がある。ベンチャーが資金を集めやすくなっているのだ」と語る。
一方で、ネガティブな面も明らかになっている。Uzzaman氏は、「半導体工場はどこもフル稼働が続いている。そうなると、TSMCのような大手ファウンドリーはどうしてもAppleのような大手顧客に向けたチップ製造を優先することになり、コロナ以前であれば対応できていた、“その他の企業向け”のチップを製造できる余裕がなくなる」と指摘する。「TSMCは顧客を選べる立場にいる。ベンチャーも、自社技術のテスト/検証用にチップを作ってもらう必要があるのに、それができなくなっているのが現状だ」(同氏)
ベンチャーが自らの技術力や競争力をアピールするには、プロトタイプが欠かせない。「特に、今大きなトレンドとなっているAI(人工知能)向けチップは、小さなスペースに多くの回路や部品を詰め込む高密度化と、低消費電力化が肝になる。これらを実現するには、少なくとも14nm以降の最先端半導体プロセス技術が欠かせない。そうなると、製造を委託できるファウンドリーも限られてしまう。だが、そうしたチップを“誰も作ってくれない”という状況になっている」(Uzzaman氏)
「こうした理由から、今後1〜2年は、スタートアップにとって成果を出すのが難しい状況が続くのではないか。これはグローバルで共通した課題になっているが、まだ多くの人が気づいていない問題だ」と同氏は続けた。
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