巨大テック企業や、有望なスタートアップがひしめくシリコンバレー。米国の富の源として強烈な“光”を放ってきたシリコンバレーだが、近年はそれらが生み出す深刻な”影”の部分も明らかになってきた。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックが発生して約2年がたとうとしている。各国は、コロナ下でいかに日常生活を続けていくかという方針にシフトしているものの、いまだに先行きは不透明であり、人々はさまざまな面で忍耐や苦労を強いられている。コロナに端を発した半導体/部品不足も一向に収束のメドは立たず、その上、ロシアによるウクライナ侵攻で物流やエネルギー産業が混乱に陥り、世界は混とんを極めている。
だがこうした状況すら追い風に転換し、強みを発揮しているのが「GAFA(Google、Apple、旧Facebook、Amazon)」だ。Appleは2022年1月、2021年10〜12月期の決算を発表したが、売上高、純利益とも過去最高となった。Meta(旧Facebook)は同四半期こそ減益となったが、メタバース事業に1兆円を投じると公表するなど、非常に強気な姿勢で事業拡大に挑む。Amazonも、2021年10〜12月期の売上高は過去最高を記録した。
このように、シリコンバレーを含む西海岸では、GAFAを中心にさまざまな企業によって富が築かれてきた。そしてそれらを支え、“シリコンバレーの富の立役者”となっているのが、あまた存在するベンチャーキャピタル(VC)である。米国におけるVCの数は、2007年の931社から、2020年には1965社に増加している。そのうち半数以上となる1043社はカリフォルニア州に本拠地を置くVCだ。運用金額も5482億米ドルに上る。
こうしたVCの存在が、スタートアップの成長を支え、GAFAまでは行かずともそれに準ずるレベルの企業を生み出し、シリコンバレーの富の形成に一役も二役も担ってきたのだ。
これは、産業の成長という面では「良いこと」なのかもしれない。
だが近年、シリコンバレーは、光と同時に影をも生み出している。そして、筆者はそれに危機感を覚えているのだ。
GAFAのようなシリコンバレーの大手企業(厳密にはAmazonの本社はワシントン州シアトルだが)は、世界の若い人々のあこがれとなってきた。若く実力のある人材が世界中からシリコンバレーを目指し、実際、GAFAのような企業では若手が数千万円レベルの年棒を受け取っていることも少なくない。
サンフランシスコの高級レストランに繰り出し、1本10万円もするようなワインをぽんぽん開けたり、超高級車を乗り回したりといった生活を送る人もいる。
だが、こうしたきらびやかなシリコンバレーのカルチャーは、一方で強烈な影ももたらしていることが明らかになり、特にここ数年は深刻な問題になっている。
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