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製造業×スタートアップ 〜革新を生み出す方程式〜
インタビュー
» 2022年06月30日 11時00分 公開

Sigfoxは次世代へ、新たなオーナーUnaBizの戦略LPWAの相互運用性の実現も視野に(1/2 ページ)

フランスSigfox社を買収し、IoT業界を驚かせたシンガポールのスタートアップUnaBiz。同社は、Sigfoxネットワークの新たなオーナーとして、次世代のSigfox構築を目指している。

[村尾麻悠子,EE Times Japan]

sigfoxを「買収した」スタートアップ

 代表的なLPWA(Low Power Wide Area)ネットワークの一つであるSigfox。フランスSigfox社が手掛けていたが、2022年4月、シンガポールのスタートアップUnaBiz(ウナビズ)がSigfox社を買収したことで、Sigfoxの事業はUnaBizが展開することになった。

 だがこの買収は、単なる買収ではない。実は、UnaBizはもともとSigfoxのサービスプロバイダー(オペレーター)だった。つまりUnaBizは、Sigfoxの“サービスプロバイダー”から”オーナー”へと転身を遂げたのである。

 UnaBizは2016年に創業した。現在は200人の従業員を抱え、シンガポール、台湾、日本、フランス、スペイン、オランダに拠点を持つ。同社の共同設立者でCEO(最高経営責任者)を務めるHenri Bong氏は、もともとSigfox社の従業員で、APAC(アジア太平洋地域)のビジネス開発およびセールスディレクターを務めていた人物だ。ディレクターとして、日本や香港、オーストラリアなどでSigfoxオペレーターのパートナー開拓に携わった。日本のSigfoxオペレーターである京セラコミュニケーションシステム(KCCS)との契約にも、Bong氏が関わっている。

 その後、Bong氏はSigfox社を退職。Sigfoxオペレーターとなるべく、UnaBizを創業した。「Sigfox社ネットワークが拡張し、KCCSなどが成功していくのを見て、自らオペレーターとなり展開してみたくなった」とBong氏は語る。もう一つ、Sigfoxを活用するソリューションを開発するというのも、UnaBiz操業の大きな狙いだった。「われわれは、ソリューション開発のために強力なエンジニアリングチームを作るというビジョンを持って、UnaBizを創業した」(同氏)

UnaBizの沿革[クリックで拡大] 出所:UnaBiz Japan

 2018年にはシリーズA投資ラウンドで1000万米ドル以上を調達。KDDIやSORACOMがこの投資ラウンドに参加している。同年には、5種類のセンサーを搭載したセンサーデバイス「UnaSensors」を発売した。

 UnaBizが開発したソリューションには、UnaSensorsの他、センサーを搭載したSigfox開発キット、IoTデータ管理プラットフォーム「UnaConnect」、物流などに向けた資産追跡ソリューション「Unatag」などがある。Sigfoxに接続されているUnaBiz製品は世界で900万個以上に上るという。

 日本でのマイルストーンとしては、ニチガス(日本瓦斯)とのスマートガス検針器のプロジェクトが挙げられるだろう。ニチガスは2019年11月、UnaBizとSORACOMが開発したSigfox対応スマートガスメーターを導入し、2020年度末までに、国内に設置されているニチガスのガスメーター85万台をスマート化すると発表した。その後スマート化されたガスメーターはさらに増え、2022年時点で115万台を超えている。

左=UnaBizの主なハードウェア/右=ニチガス向けに開発したスマートガスメーター「スペース蛍」の外観。写真上部は、スペース蛍出荷100万台を記念して制作された、黄金のスペース蛍のプレート[クリックで拡大]

 2021年10月には、シリーズB投資ラウンドで、日本の独立系投信投資顧問企業であるスパークス・グループから2500万米ドルを調達した。「このようにUnaBizは日本企業ととても関係が深い」(Bong氏)

“オペレーター”から”オーナー”へ

 Bong氏は、UnaBizによるSigfox社買収は、特にIoT業界を揺るがしたと語る。「いわば子会社が親会社を買収したようなもの。このような話は、同業界では聞いたことがない」とBong氏は述べる。

 2010年に設立されたSigfox社は、言うまでもなくLPWAのパイオニア的企業だった。「Sigfox社は、フランスのテック企業として初めて3億ユーロ以上を調達し、フランス初のユニコーン企業として名をはせた」(Bong氏)。Sigfoxネットワークは70カ国以上に展開され、UnaBizやKCCSをはじめ、各国のオペレーターはSigfoxの技術に継続的に投資してきた。だが2022年2月、Sigfox社は経営難から破産を申請。再建に向けて新しい出資先を探すとした。そこで白羽の矢が立ったのが、UnaBizだった。

 「Sigfox社の買収候補には、UnaBizを含めて9社あった。その中でわれわれは最も小さな企業だった」(Bong氏)。だが既定の手続きをへて、Sigfox社の従業員や、Sigfoxネットワークのオペレーターなどエコシステムのメンバーが満場一致で新オーナーとして選んだのが、UnaBizだったのである。企業の規模に関係なくSigfoxの技術に知見を持っていたことが評価されたとBong氏は述べる。

 Bong氏はSigfox社の倒産について「IoT市場の成長が5年、遅かった」と分析する。そこにCOVID-19が追い打ちをかけた。半導体不足により、Sigfox製品の供給が追い付かず、需要に応えられなかったのだ。

左=LPWAネットワークの市場成長予測と、主要なLPWA技術/LPWA技術の比較[クリックで拡大] 出所:UnaBiz Japan
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