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単結晶薄膜×接合技術で超音波センサー感度が20倍にガラス基板などにも接合可能(1/2 ページ)

沖電気工業(以下、OKI)とKRYSTALは2022年8月17日、単結晶の圧電薄膜とSOI(Silicon On Insulator)ウエハーの接合技術を確立し、圧電MEMSデバイスの性能を向上する「圧電単結晶薄膜接合ウエハー」の試作に成功したと発表した。

» 2022年08月19日 14時30分 公開
[村尾麻悠子EE Times Japan]

圧電薄膜の単結晶化と接合技術で、MEMSデバイスを高性能化

 沖電気工業(以下、OKI)とKRYSTALは2022年8月17日、単結晶の圧電薄膜とSOI(Silicon On Insulator)ウエハーの接合技術を確立し、圧電MEMSデバイスの性能を向上する「圧電単結晶薄膜接合ウエハー」の試作に成功したと発表した。

 同ウエハーでMEMS超音波センサーを試作したところ、従来品に比べ、感度が20倍向上したという。両社は、2022年11月をめどに、圧電MEMSデバイスメーカーなどに同ウエハーのサンプル出荷を開始し、2023年にはさまざまな要求に応じたカスタムウエハーの提供を目指す。

 圧電薄膜は、センサーやアクチュエーターといった圧電MEMSデバイスの特性を決める重要な薄膜層だ。現在、圧電MEMSデバイスには、製造が容易な多結晶薄膜が用いられている。圧電薄膜を単結晶化することでさまざまな基本特性が向上することが知られているが、単結晶薄膜をウエハー上に形成するためには、特殊なバッファー層*)が必要になるため、実現できるデバイスの構造が限られていた。

*)シリコン単結晶基板と圧電単結晶膜の結晶格子のミスマッチを整合させるための層。

シリコン基板、ガラス基板にも圧電単結晶薄膜を接合可能に

 今回試作に成功した「圧電単結晶薄膜接合ウエハー」は、KRYSTALの独自技術により成膜したPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)圧電単結晶薄膜を、OKIの「CFB(Crystal Film Bonding)技術」を用いてバッファー層から剥離し、SOIウエハーに直接接合したものだ。

 CFB技術は、異なる素材の基板に分子間力接合する技術で、もともとはOKIのLEDプリンタ事業で開発された。LEDのクリスタルフィルムを剥離してICと接合し、LEDとICを一体化させたプリンタ用LED光源を製造するための技術である。ただ、CFB技術はこの用途にしか適用されておらず、他のアプリケーションを探していたとOKIは説明する。

 一方、KRYSTALは、圧電薄膜の単結晶化に成功し、既に多くの市場実績を持つものの、シリコン以外の基板には成膜が難しく、「ガラスやプラスチックなどさまざまな基板で提供してほしい」という顧客のニーズに応えられずにいた。

KRYSTALが提供する、8インチPZT単結晶成膜ウエハー[クリックで拡大]

 今回、両社の技術を掛け合わせたことで、圧電単結晶薄膜を、SOIウエハーのみならず、ガラス基板などにも接合し、提供できるようになる。

KRYSTALのPZT単結晶薄膜を剥離してシリコン基板に接合したもの(左)と、石英基板に接合したもの(右)。膜厚は1μm。長方形や丸などのパターンが見えるが、これは、要望に合わせてさまざまなパターニングが可能ということを示している[クリックで拡大]

 KRYSTALで提供している成膜ウエハーは8インチだが、OKIのCFB技術は、任意のサイズに剥離し、スタンプのように接合できるので、12インチウエハーをはじめさまざまな大きさのウエハーに対応できる。

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