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SiCやGaN、ダイヤモンド基板をゆがみなく研磨する技術、阪大「アカデミア Award」最優秀賞受賞

「SEMICON Japan 2022」(2022年12月14日〜16日、東京ビッグサイト)において、将来有望な半導体に関する大学/大学院の研究を表彰する「アカデミア Award」が初開催された。

» 2022年12月28日 13時30分 公開
[半田翔希EE Times Japan]

 「SEMICON Japan 2022」(2022年12月14日〜16日、東京ビッグサイト)において、将来有望な半導体に関する大学/大学院の研究を表彰する「アカデミア Award」が初開催された。最優秀賞を受賞したのは、次世代パワー半導体として期待されるSiC(炭化ケイ素)やGaN(窒化ガリウム)および、ダイヤモンド基板を高能率かつゆがみなく研磨するプラズマ/電気化学加工プロセスを研究する、大阪大学山村研究室だ。

「アカデミア Award」会場の様子 「アカデミア Award」会場の様子[クリックで拡大]

 アカデミア Awardは、半導体が支える産業の長期的視点に基づき、今後さらなる工夫を加える事で、将来結果が実ることを期待する研究を後押しすることを目的に、今回から初めて開催された。大学/大学院の研究室単位で応募でき、1)SEMICON Japan内「アカデミア」に出展している研究室であること、2)現時点で産業界の共同研究に至っていない、事業化が決定しているものでないこと、という2つの条件を満たした研究が審査対象だ。今回、SEMICON Japan内の「アカデミア」エリアに出展した40研究室中の20研究室が応募し、9研究室が1次書類審査を通過。2022年12月14日に2次審査および表彰が行われ、山村研究室が最優秀賞を受賞した。

SiC、GaN、ダイヤモンド基板も研磨可能

 受賞した山村研究室の研究は、次世代の省電力パワーデバイス用半導体として期待されるSiCやGaNおよび、ヒートスプレッダーとして有用なダイヤモンド基板などの硬脆材料を高能率かつゆがみなく研磨するプラズマ/電気化学加工プロセス技術だ。

大阪大学の山村研究室の展示ブース 大阪大学の山村研究室の展示ブース[クリックで拡大]

 GaNは次世代のパワーデバイス用半導体として期待されているが、放熱材料に既存のシリコンを使用した場合、熱伝導率が低く高温化してしまうためデバイスの性能や信頼性に問題がある。同研究室メンバーで大阪大学 大学院工学研究科 助教の孫栄硯氏は、「先行研究から、放熱材料にダイヤモンドを使用することで温度上昇を6分の1に、消費電力を10分の1に軽減できることが分かっていた。しかし、従来の研磨/加工方法では30時間以上の時間を要し製造プロセスコストの5割を占めている点や、ダイヤモンドが物質中最高硬度である点から加工は困難だった」と 同研究の背景と課題について説明した。

 同研究室によると、ダイヤモンドの研磨を行う場合、従来はスカイフ研磨もしくはCMP(Chemical Mechanical Polishing)研磨などを行っていた。しかし、スカイフ研磨では高圧で研磨を行うため基板表面が傷つくほか、高圧によりダイヤモンドがグラファイトになってしまうなどの問題があったという。また、CMP研磨では、強い酸化剤を使用するため非常に高コストで環境負荷が大きく、加工率も低かった。そこで同研究室が開発したのが、基板表面をプラズマで軟化させ、軟化した層を研磨するプラズマ援用研磨技術(PAP:Plasma-Assisted Polishing)だ。

PAPの特長とイメージ PAPの特長とイメージ[クリックで拡大]

 PAPについて、同研究室 研究員の杉原聡太氏は「PAPは軟化した表面を研磨するため傷が入りにくく、高効率かつ高水準で平たん化でき、コスト削減も実現できる」と説明する。実際に、20mm角の単結晶ダイヤモンド基板をPAPで研磨したところ、100μm程度の大きなうねりが0.5μm程度のうねりまで平たん化できたという。杉原氏は、「ラマン分光分析で結晶状態を確認したところ、PAPではダイヤモンドがグラファイトになったり、結晶構造が破壊されたりすることはなく、放熱基板として実用化するのに十分な性能を持っている」と研究成果を強調した。

素材ごとの研磨結果 素材ごとの研磨結果[クリックで拡大]

 同研究室は「GaNでもPAPについて同様の研究を行っている。今後も独自のプラズマ援用研磨技術の開発を続け、高効率かつ高能率な研磨技術を通じて脱炭素社会の早期実現への貢献を目指す」としている。

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