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「諦め感から風向き変わる」、半導体政策の本格化でSEMIジャパン代表取締役 浜島雅彦氏(1/2 ページ)

半導体製造装置や材料に焦点を当てた展示会「SEMICON Japan」が2022年12月14〜16日に東京ビッグサイトで開催される。今回、目玉の一つとなるのが、半導体パッケージングに特化したスペースとして新設される「Advanced Packaging and Chiplet Summit(APCS)」だ。SEMIジャパン代表取締役 浜島雅彦氏に、APCSの狙いや、昨今の半導体業界を取り巻く環境の変化などを聞いた。

» 2022年12月01日 16時00分 公開
[村尾麻悠子EE Times Japan]

 半導体製造装置や材料に焦点を当てた展示会「SEMICON Japan」が2022年12月14〜16日に東京ビッグサイトで開催される。今回、目玉の一つとなるのが、半導体パッケージングに特化したスペースとして新設される「Advanced Packaging and Chiplet Summit(APCS)」だ。SEMIジャパン代表取締役 浜島雅彦氏に、APCSの狙いや、昨今の半導体業界を取り巻く環境の変化などを聞いた。

SEMIジャパン代表取締役 浜島雅彦氏

装置/材料メーカーにもっとスポットライトを当てる

――2021年は、2年ぶりに「SEMICON Japan」がリアルで開催されました。

浜島氏 コロナ禍だったので来場者数はそれほど多くなかったが、2年ぶりのリアル開催で喜んでもらえた。ことし(2022年)のSEMICON Japanは、より多くの来場者数を見込めるのではないか。

 今回新設したAPCSの出展社数も70〜80社を予定している。OSATメーカーなどに来場してもらえるよう、積極的に声もかけてきた。チップレットや実装技術に特化した展示スペースを設けて全面に押し出しているのは、他の国/地域のSEMIのイベントにはなく、SEMICON Japan独自のものだ。

――日本の半導体デバイスの世界市場シェアが低いことばかりが注目されがちですが、半導体製造装置や材料では強いポジションを持つメーカーも多く存在します。半導体産業において日本の求心力はいかがですか。

浜島氏 日本の求心力はまだあるが、材料や装置にスポットライトが“当たらなすぎる”と感じている。世界の半導体デバイスメーカーは、日本の装置/材料メーカーの動きに注目している。装置や材料の技術やメーカーはもっと脚光を浴びてよい。

 別の言い方をすれば、われわれが、装置/材料メーカーにより光を当てるための支援をすべきだと思っている。

“諦め感”から風向きが変わってきた

――経済産業省(経産省)が2021年6月に発表した半導体戦略を皮切りに、日本政府が半導体政策に力を入れるようになってきました。半導体業界の反応はいかがですか。

浜島氏 数年前までは、半ば”諦め感”があった。製造装置や材料は高い競争力を持っているが、特に半導体デバイスの分野は他国の勢いが強く、危機感を通り越して諦めの方が大きかったように思う。

 とはいえ決して危機感がなかったわけではなく、半導体不足などここ数年の状況を踏まえ、関係者が政府に働きかけることで、経産省の半導体戦略策定につながったのではないか。

 経産省は、半導体産業基盤緊急強化パッケージとして、IoT用半導体生産基盤の強化、日米連携による次世代半導体技術基盤の強化、グローバル連携による将来技術基盤の強化、という3つのステップを提示している。これらはまさに、業界の中で“熟成された危機感”から生み出されたものだ。

 一方で、装置メーカーや材料メーカー側から見ると、“今さら感”は多少ならずともあったのではないか。歴史を振り返れば、日本政府は半導体関連で多くの国家プロジェクト(国プロ)を行い、研究開発に膨大な資金を投入してきた。だがこれらの国プロが実を結ぶことはなく、政府側も半導体に対して諦めてしまったのだろう。

 そうした流れの中で、装置や材料、コンポーネント分野の日本のプレイヤーは、政府に頼ることなく、自ら海外市場を開拓し、勝ち抜いてきた。そのため、“今さら感”が強かったのは当然のことだ。

 だが、経産省は、2021年6月の半導体戦略の発表以降、ある程度スピード感を持って動いてきた。それが、日本の半導体業界のリーダーたちの動きを変えてきたのではないか。そのため、“今さら感”のような雰囲気から、現在はかなり前向きな方向に変わってきたと感じている。

 個人的には、半導体の緊急強化パッケージとして3ステップを定めたことには賛成している。ただ、それを実行するのは、資金や人的リソースの面で大変な困難を伴うだろう。政府が提言する半導体政策が、予定通りの時期に、思い描いた通りの形で実現できるかについても、可能性が非常に高いとは決して言えない。だが、一連の政策は「今チャレンジしなければだめだ」という強い危機感で始まっていることは分かる。だからこそ、諦め感や今さら感が以前よりも弱まり、「それならやってみるか」という雰囲気が熟成され始めている。

 (半導体強化へのタイミングが)遅い、投資金額が少ない、といったさまざまな声はあるが、現在の日本政府のスピード感はポジティブに捉えている。

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