北陸先端科学技術大学院大学(JAIST)とデンマーク工科大学は、単層グラフェン膜を用いたNEMS(ナノ電子機械システム)スイッチを開発した。0.5V未満という極めて低いスイッチング電圧で、オンオフ切り替えを5万回繰り返しても安定動作することを確認した。
北陸先端科学技術大学院大学(JAIST)サステイナブルイノベーション研究領域の水田博教授とマノハラン ムルガナタン元JAIST講師、デンマーク工科大学のゴク フィン ヴァン博士研究員(元JAIST博士研究員)らは2023年1月、単層グラフェン膜を用いた「NEMS(ナノ電子機械システム)スイッチ」を開発したと発表した。0.5V未満という極めて低いスイッチング電圧で、オンオフ切り替えを5万回繰り返しても安定動作することを確認した。
水田教授らの研究チームはこれまで、グラフェンをベースとしたNEMS技術によるスイッチングデバイスの開発に取り組んできた。2014年には、2層グラフェンを用いて両持ちはりを形成したグラフェンNEMSスイッチの原理実験に成功した。このNEMSスイッチは動作を繰り返すうちに、グラフェン膜が金属表面に張り付く(スティクション)という課題もあったという。
研究チームは今回、制御電極表面に単層の六方晶窒化ホウ素原子層膜を設けた。これによりスティクションの発生を抑えることができ、安定したオンオフ動作を実現した。同時に、素子構造を最適化することで、0.5V未満というスイッチング電圧を達成した。この値は、「従来の半導体技術を用いて製造されたMEMSスイッチに比べ約2桁も小さい」という。
また、繰り返し動作を5万回以上行った後でも5桁近いオンオフ電流比や、約20mV/decという急峻(きゅうしゅん)な電流スイッチング傾きを維持するなど、経時劣化が極めて小さいことも確認した。
開発したグラフェンNEMSスイッチは、大面積化が可能なCVDグラフェン膜とhBN膜を用いて作製しており、将来の大規模集積化と大量生産に対応できる技術とみている。
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