米国のCHIIPS法など、ハイテク産業に向けた投資が加速する一方で、世界的な人材不足が課題となっている。現在、ICT業界は、アフリカ大陸がこの課題解決の可能性を秘めていると期待を寄せている。
小学5年生のSalome Tayengwaさんは、母国ジンバブエの病院の危機的な混雑を緩和したいと考え、Pythonを用い、一般的な病気のデータベースを作成した。 「Patient Helper」と名付けられたこの情報バンクにアクセスして自分の症状を入力すると、情報と推奨事項を取得できる。
Broadcom Foundationのプレジデントを務めるPaula Golden氏は米国EE Timesに、「ジンバブエのハラレにある学校に通うSalomeさんが第1回『Broadcom Coding with Commitment』賞を受賞した」と語った。Coding with Commitmentは、科学コンテストで十分に評価されてこなかったグループの学生や学生チームを評価することを目的としたコンテストだ。
Broadcomやその他の情報通信技術(ICT)企業にとって、人口14億人のアフリカ大陸は、自社技術の購入と使用を期待できる巨大な未開拓市場だ。しかし、それより重要なのは、Salomeさんや彼女の仲間のアフリカの若者がプログラマーやアナリスト、半導体設計者などのICTの担い手となるように奨励することで、業界の世界的な労働者不足を補える可能性があることだ。
その理由の1つといえるのは、アフリカは世界で2番目に大きい大陸であり、人口ボーナスがあることだ。アフリカの人口は世界で最も若く、ドイツの市場調査会社Statistaによると、2021年時点でアフリカ人の約40%、つまり5億6000万人が15歳以下だった。アフリカの年齢中央値は年々上がってはいるが、約20歳と依然として低い。
UNICEF(国際児童基金)は、2100年にはアフリカに住む18歳以下の若者は11億人になり、世界の子供の人口のほぼ半分(47%)を占めると予測している。
Broadcomは、パートナーでありCoding with Commitmentのスポンサーを務める米国の非営利団体Society for Scienceと共に同コンテストをサポートするだけでなく、10年間で1500人以上の若者にコーディングを教えてきた南アフリカの非営利団体Communiversity of South Africaと、慈善事業を行うための提携を結んでいる。
米国では、ハイテク産業の国内経済発展を支援することを目的としたCHIPS法(正式名称:CHIPS and Science Act)が2022年8月に成立したことで、有資格技術者の不足を補うことが急務となっている。ホワイトハウスによると、企業は2021年1月以降、米国の半導体製造に公的資金以外に1500億米ドルの投資を行っている。
米国の市場調査会社Gartnerの「2021-2023年新興技術のロードマップ調査(2021-2023 Emerging Technology Roadmap Survey)」によると、IT企業の複数の幹部が、「国内のハイテク産業の成長にとって第1の障壁となるのは、人材不足だ。新興技術のうち64%の導入に必要となるのは、コストやセキュリティよりも人材である」と語っているという。
Golden氏は「次の15年に起こるあらゆる技術的な課題に対処するためには、そのために必要なことをする方法を知る人材が、世界的に不足している」と述べた。
「海外であれ自国内であれ、Salomeさんのような若者をデジタル業界のハイテク職に引き込むことに失敗するのは、Broadcomなどの企業にとって悲惨な結末を招くことになる」(同氏)
Golden氏は「CHIPS法の投資対象の一つとなる、魅力的な新規の雇用を創出するには、子供たちに一刻も早くデジタルリテラシーを持たせる必要がある。これは非常に重大な懸念だ」と述べた。
Broadcom以外の企業によるアフリカに焦点を当てたプログラムは、政府、開発者コミュニティー、若者のICTキャリアのための準備を組み合わせたものをターゲットにしている。
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