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マイコン不要でイーサネット化、車載用の接続技術ゾーン型への移行を容易に(1/2 ページ)

アナログ・デバイセズ(ADI)は「第15回 オートモーティブワールド」(2023年1月25〜27日、東京ビッグサイト)で、自動車向けの最新技術などを展示した。

» 2023年01月31日 14時30分 公開
[村尾麻悠子EE Times Japan]

 アナログ・デバイセズ(ADI)は「第15回 オートモーティブワールド」(2023年1月25〜27日、東京ビッグサイト)で、自動車の次世代E/E(電気・電子)アーキクチャに向け、10BASE-T1Sベースの接続技術や、ギガビットクラスのシリアル接続技術などを展示した。

ゾーン型への移行を容易にする接続技術「E2B」

 現在、E/Eアーキクチャは、機能ごとにECU(電子制御ユニット)をまとめたドメイン型から、自動車を複数のゾーンに分け、セントラルECUで制御するゾーン型に移行しつつある。今回アナログ・デバイセズが展示した「ADI E2B(Ethernet to the Edge Bus)」は、このゾーン型に向けた製品で、10Mbps(ビット/秒)の通信速度を持つ10BASE-T1S対応のPHYとMACを1パッケージに搭載したチップである。独自のIP(Intellectual Property)により、マイコンやソフトウェアスタックを搭載しなくても、自動車のセンサーやアクチュエーターといった末端ノードの機器をイーサネットで容易に接続できるようになる。

 現在の自動車では、末端ノードの接続にはCAN/LINを用いた車載ネットワークが導入されていることが多い。ゾーン型アーキテクチャに対応すべく、CAN/LINで接続された末端ノードをイーサネット化するためには、各末端ノードにマイコンやソフトウェアスタックを搭載する必要がある。ADI E2Bは、これを不要にできるのだ。そのため「実装面積とコストを大幅に削減しつつ、ゾーン型への移行を容易にする」とアナログ・デバイセズは説明する。「ゾーン型アーキテクチャでは、どのイーサネットを使用するのかがまだ明確ではないものの、アナログ・デバイセズとしては、末端ノードの通信では10Mbpsで十分だと考えており、ADI E2Bでは10BASE-T1Sをサポートしている」(同社)。ADI E2Bは開発中で、2024〜2025年の製品化を計画している。

「E2B」の想定アプリケーションE2Bのデモ 左=「ADI E2B」の想定アプリケーション。センサーやアクチュエーター、Bluetooth Low Energy(BLE)通信を使用するさまざまなエッジ機器が考えられる/右=ADI E2Bのデモの様子。各ボードは、各末端ノードを表していて、そのいずれにもADI E2Bが搭載されている[クリックで拡大]

1本のケーブルで高速伝送

 旧Maxim Integratedが開発した「GMSL(Gigabit Multimedia Serial Link)」のデモも展示した。GMSLは、最大12Gbpsの信号伝送を1対のシリアルケーブルで可能にする技術。ADAS(先進運転支援システム)や自動運転では、多数のカメラやLiDARなどとECUを接続する必要があるが、従来のパラレル通信では、データ量の増加に伴って配線数も増え、その結果コストとノイズが増大してしまう。GMSLであれば、1本のシリアルケーブルで済む。

 デモでは、6Gbpsまでサポートする「GMSL2」で、サラウンドビューカメラの映像を伝送する様子を示した。具体的には、GMSL2シリアライザーを搭載した7.4Mピクセルのカメラ4台を設置し、それらで撮影している映像をHDMIを介して4Kディスプレイに出力した。RAW画像の処理は、NVIDIAのSoC(System on Chip)「Xavier」で行っていて、Xavierには、アナログ・デバイセズのGMSL2デシリアライザーが搭載されている。デモでは、15mのケーブルを使っていることがポイントだ。「15mは、車載ネットワークの構築には十分な長さ。6Gbpsのデータ伝送を15mのケーブルで実現していることは、実際に車載ネットワークとして使用できることを意味している」(アナログ・デバイセズ)

GMSL2対応デシリアライザーを搭載したカメラ4台と、15mのケーブルを用いたデモの様子[クリックで拡大]
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