米バイデン政権は、Huaweiに製品を輸出する米国企業へのライセンス供与を停止し、中国Huaweiに対する米国技術の販売を、完全に禁止することを目指しているという。専門家の解説を紹介する。
米国がHuaweiに対して講じた輸出禁止措置は、中国の半導体やAI(人工知能)、量子コンピューティングなど、さまざまな業界に影響を及ぼす新たな規制措置の最初の一撃だろう。影響を受けるとみられるこれらの業界は全て、軍事/ビジネス領域において技術的優位性を確立する上で非常に重要視されている。
Financial Timesが2023年2月、この計画に詳しいホワイトハウス関係者の発言を基に報じたところによると、バイデン政権は、中国通信大手Huaweiに製品を輸出する米国企業へのライセンス供与を停止し、Huaweiに対する米国技術の販売を、完全に禁止することを目指しているのだという。
米国EE Timesの取材に応じた情報筋は、「中国最大手の半導体メーカーであるSMICやYMTCの他、小規模の国内ライバル企業であるHua Hong Semiconductor(以下、Hua Hong)などは、この新たな規制措置により、成長の妨げとなるさまざまな障害に直面することになるだろう」と述べている。
ワシントンD.C.に拠点を置くコンサルティング会社Albright Stonebridge Groupで、中国・技術政策部門担当シニアバイスプレジデントを務めるPaul Triolo氏は、「新しい最終用途規制は、例えばHua Hongのように、高付加価値技術の規模を拡大して14nmプロセス製造に取り組みたいと考えている他の中国メーカーを、自動的に制限できる構造になっている。システム全体が、自動的に、中国が技術レベルで一定の後れを取った状態に維持できるよう設定されている。米国家安全保障担当補佐官であるJake Sullivan氏が2022年10月にコメントした内容をみると、米国は、自国メーカーが各分野でリーダー的地位を維持できるようにするための試みにおいて、もはや“スライド制”を採用するつもりはないようだ」と述べている。
Politicoが2023年1月27日、新たに下院外交委員会委員長に就任したMichael McCau氏をはじめ、4人の議会関係者および前国家安全保障当局関係者たちの発言を基に報じたところによると、ホワイトハウスは米国のビジネス界に対し、中国技術業界の全セグメントに参入することを禁じる計画を検討しているという。
かつてトランプ政権の米商務省(DoC)で経済成長・エネルギー・環境担当国務次官を務めた経歴を持ち、CHIPS法(正式名称:CHIPS and Science Act)の立案者の1人でもあるKeith Krach氏は、EE Timesの取材に対し、次のような展望を語った。
「SMICとYMTCは、軍事用途向けに半導体を製造することによって、米国家安全保障に深刻な脅威をもたらす存在となっている。このため、さらなる規制措置を確実に実施する必要がある」(Krach氏)
また同氏は、「特に優先順位が高いのは、AlibabaとBaidu、Tencentの3社とその子会社だ。これら3社は、中国の軍事用AIプログラムにおいて最も重要な役割を担っていて、監視体制を実現する上でHuaweiに次ぐ存在だ」と付け加えた。
米国は現在のところ、Huaweiにターゲットを定めている。Huaweiは、元人民解放軍将校であるRen Zhengfei氏が1987年に設立した企業で、今や世界最大規模の通信企業の1社だ。2020年には世界最大のスマートフォンメーカーへと成長し、米国政府がTSMCからHuaweiへの最先端半導体チップの供給を停止することになった。
Krach氏は、「Huaweiは、中国政府の軍事用機器ツールの1つである監視体制をサポートし、新疆ウイグル自治区の大量虐殺にも加担している。同社は、商務省のエンティティリスト(Entity List)と、米国国防総省の『中国の共産主義軍事企業(Communist Chinese military companies)』リストに掲載されている。同社のリーダーシップ構造には、中国共産党の“細胞“が組み込まれており、これまでにも知的財産の盗用や、司法妨害、銀行や米国政府への虚偽報告などを行ってきた」と述べる。
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