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「業界初」10BASE-T1S用コモンモードフィルター、TDK低容量と最高レベルのSパラメーターを両立(1/2 ページ)

TDKは2023年2月7日、車載Ethernet規格10BASE-T1Sに業界で「初めて」(同社)対応したコモンモードフィルター「ACT1210Eシリーズ」を開発し、量産開始したと発表した。

» 2023年02月09日 15時10分 公開
[永山準EE Times Japan]

 TDKは2023年2月7日、車載Ethernet規格10BASE-T1Sに業界で「初めて」(同社)対応したコモンモードフィルター「ACT1210Eシリーズ」を開発し、量産開始したと発表した。独自の巻線構造と最適材料採用によって、低いライン間容量と良好なSパラメーターを両立。信号波形への影響を抑えつつも、効果的にノイズを抑制できるという。

10BASE-T1S導入の動きと課題

車載Ethernet規格10BASE-T1S用コモンモードフィルター「ACT1210Eシリーズ」[クリックで拡大] 出所:TDK 車載Ethernet規格10BASE-T1S用コモンモードフィルター「ACT1210Eシリーズ」[クリックで拡大] 出所:TDK

 車載ネットワークでは、ADAS(先進運転支援システム)や自動運転技術の進化によるカメラ、LiDARなどの搭載数増加から、通信速度100Mビット/秒(bps)の100BASE-T1および1Gbpsの1000Base-T1といった高速な車載Ethernet規格の採用が始まっている。だが、現在主流のCANやCAN FD、Flex-Ray規格のネットワークとの接続には、通信プロトコル間の変換/中継を行うゲートウェイが必要で、変換方法によっては中継に時間がかかりすぎ、車載制御に問題が生じるリスクがある。

 100BASE-T1および1000BASE-T1は、ECU(電子制御ユニット)同士が1対1で通信する「P2P(Peer to Peer)」通信方式に限定されるが、10BASE-T1SはCANやCAN FD、Flex-Ray規格と同様、複数のECUを接続可能な「マルチドロップ接続」を採用できる。そこで、自動車メーカーでは、10BASE-T1S採用によって車載ネットワークの通信規格をEthernet系に統一する検討が進められてるという。Ethernet系に統一すれば、ゲートウェイが不要となり、通信速度の向上のほか、システムのシンプル化/高セキュリティ化/設計工数削減などのメリットがある。

代表的な車載向け通信規格の種類や、従来の車載ネットワークと10BASE-T1Sを採用しEthernet系に統一した場合の違いを示した図[クリックで拡大] 出所:TDK 代表的な車載向け通信規格の種類や、従来の車載ネットワークと10BASE-T1Sを採用しEthernet系に統一した場合の違いを示した図[クリックで拡大] 出所:TDK

 ただ、10BASE-T1Sの導入には課題がある。ECU内にあるコモンモードフィルターやESD(静電気放電)対策部品、IC、コネクターなどは、それぞれがコンデンサーのような「容量」を持つが、機器がケーブル上に”芋づる式”に接続されるマルチドロップ接続では、これらの容量が合計されてしまう。この容量が大きいほど、信号波形の立ち上がり/立ち下がりが緩やかになり、エラー要因になるという。同社の説明担当者は、「許容可能な容量が限られる中、容量を低く抑えつつもノイズやESD対策を両立できるような部品選定/回路設計をしなければならないというのが、10BASE-T1Sの回路設計の難しさだ」と説明していた。

10BASE-T1S採用の課題について[クリックで拡大] 出所:TDK 10BASE-T1S採用の課題について[クリックで拡大] 出所:TDK

 TDKは今回、これらの課題に対応し、OPEN Allianceが定めた各要求特性を高いレベルでクリアした、業界初(同社)の10BASE-T1S用コモンモードフィルターとして、ACT1210Eシリーズを開発した。

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