混沌とした半導体市況の中において、その中心的存在とも言えるSamsung Electronics、Intel、TSMCの半導体大手3社の現状を分析し、各社の今後の見通しについて述べる。【修正あり】
本連載の前回記事(第61回:半導体不足解消後の悩みは「半導体過剰在庫問題」へ)で述べたように、まだ一部で半導体不足が解消されていない状況下ではある。だが、半導体市況全体としては下落が続いている。特にメモリ市場では供給過剰に伴う単価下落も発生し、Samsung Electronicsの収益性に大きな影響を与えている。これまで四半期毎に売り上げを伸ばしてきたTSMCでさえ、2023年1〜3月期売上高は2022年10〜12月期を下回る見込みとなっている。そしてIntelは、市況の悪化に加えて戦略商品出荷の遅れが深刻な問題になっている。今回は、混沌とした半導体市況の中において、その中心的存在とも言える半導体大手3社の現状を分析しながら、各社の今後の見通しについて述べてみたいと思う。
図1は、Samsungの四半期毎の営業利益の推移をグラフ化したものである。
総合電機メーカーである同社は、VA/DA部門(テレビなど民生機器)、MX/Networks部門(スマホなど通信機器)、DS部門(半導体)、SDC部門(ディスプレイ)、Harman(自動車機器)など多くの事業を抱えている。最大の稼ぎ頭であるDS部門の営業利益が激減しており、2022年10〜12月期の同部門は何とか赤字転落を免れたというわずかな営業利益にとどまった。言うまでもなくこれはDRAM/NAND型フラッシュメモリ市況の悪化によるものであり、2023年1〜3月期および4〜6月期は、2022年10〜12月期以上の悪化が懸念されている。Samsungにとって、かつてはMX/Networks部門が収益の柱だったこともある。だが、グラフからも分かるように、直近ではDS部門の好不調が全社の業績を大きく左右している。DS部門にはファウンドリー(半導体受託製造)事業も含まれているが、DS部門の収益がメモリ市況と連動していることは明らかである。
Samsungはファウンドリー分野でTSMCに次ぐ2番目の実績を誇っているが、売上高はTSMCの半分以下にとどまっており、収益面ではより大きな差がついているものと推察される。この点については後述する。
図2は、Intelの四半期毎の営業利益の推移をグラフ化したものである。
Intelの業績は2022年初頭から悪化し続けている。2022年1〜3月期は黒字を維持したものの、2022年4〜6月期以降は3四半期連続で営業赤字にあえいでいる。Intelの収益の中心はClient Computing部門(PC向け)とData Center and AI部門(サーバ/データセンター向け)の2つだ。ただ、いずれも市況が低迷していることに加え、Intelの戦略商品を市場に計画通りに投入できていない。つまりIntel自身のオウンゴールで業績が悪化しているのだ。特にサーバ向けの戦略商品「Sapphire Rapids」は2021年後半に出荷予定だったが、2022年になっても出荷できず、なんと2023年1月にまでずれ込んだ。出荷を待ち望んでいた顧客の中には、この遅れを我慢できずにAMDなどの競合に切り替えざるを得なかった事例も多いと聞く。
ここから巻き返しを図りたいIntelだが、2023年1〜3月期の売上高見込みは110億米ドル前後、2022年10〜12月期の140億米ドルを下回る見込みのようである。かつては四半期売上が200億米ドルを超えていたIntelにとって、このレベルの売り上げでは黒字転換は期待できない。Intelの赤字決算はまだ続く見込みである。
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