今回紹介した半導体業界の大手3社は、年間の設備投資額が日本円に換算して3兆円から5兆円に上り、世界の半導体製造装置の約半分を3社が買い占めている。SamsungやIntelの業績がどれだけ低迷しようと、半導体業界で重要な地位を占める彼らへの注目度が下がることはないだろう。ただ、かつて最先端プロセスの実績でこれだけTSMCに差を付けられたことはなく、結果として相対的にTSMCへの注目度がますます高まることは確実と思われる。しかもTSMCは最先端で名を馳(は)せているものの、実際に高収益を挙げているのは減価償却の終わった古い世代のプロセスであり、日本や欧州などのIDM向けに手堅いビジネスを展開している。
各国や地域の産業政策に半導体の重要性が強く認識されている現在、台湾に本社を置くTSMCをそのままにしておいてよいのか、補助金を払ってでも誘致すべきではないのかと、米国、日本、欧州がそれぞれTSMCの工場誘致に乗り出している。TSMCの強みは最先端のみにあらず、ということだろう。SamsungやIntelにも誘致の声はかかっているが、その人気ぶりには雲泥の差があるのだ。
熊本へのTSMC誘致については、必ずしも賛成派ばかりではなく、さまざまな意見があったと聞いている。しかし、今後半導体産業がますます重要視されることは確実であること、現在最も求心力のあるTSMCの誘致を成功させることが、日本における半導体産業の次のステップにつながることを、筆者としてはここで改めて強調しておきたい。
2023年3月17日までの会期で開催しているオンライン展示会「ITmedia Virtual EXPO 2023 春」(主催:EE Times Japanなど)で、本連載の筆者である大山聡氏(=写真左)とRapidus社長の小池淳義氏(=写真右)の特別対談を公開しています。
2nmプロセスの先端半導体の国産化を目指し2022年11月から本格始動したRapidus。ただ、リソース面でもビジネス面でもハードルは高く、「先端ロジックの分野では数十年の遅れ」ともいわれる日本で、Rapidusはどのようにファウンドリービジネスを展開していくのでしょうか。大山氏が小池氏との対談を通して、Rapidusの戦略と勝算に迫ります。
ぜひ、ITmedia Virtual EXPO 2023 春にご参加いただき、特別対談をご視聴ください。2023年3月17日までです。(編集部)
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慶應義塾大学大学院にて管理工学を専攻し、工学修士号を取得。1985年に東京エレクトロン入社。セールスエンジニアを歴任し、1992年にデータクエスト(現ガートナー)に入社、半導体産業分析部でシニア・インダストリ・アナリストを歴任。
1996年にBZW証券(現バークレイズ証券)に入社、証券アナリストとして日立製作所、東芝、三菱電機、NEC、富士通、ニコン、アドバンテスト、東京エレクトロン、ソニー、パナソニック、シャープ、三洋電機などの調査・分析を担当。1997年にABNアムロ証券に入社、2001年にはリーマンブラザーズ証券に入社、やはり証券アナリストとして上述企業の調査・分析を継続。1999年、2000年には産業エレクトロニクス部門の日経アナリストランキング4位にランクされた。2004年に富士通に入社、電子デバイス部門・経営戦略室・主席部長として、半導体部門の分社化などに関与した。
2010年にアイサプライ(現Omdia)に入社、半導体および二次電池の調査・分析を担当した。
2017年に調査およびコンサルティングを主務とするグロスバーグ合同会社を設立、現在に至る。
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