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危機的状況にある、米国軍向けの半導体供給体制国内サプライチェーン構築は遠く(2/4 ページ)

» 2023年02月16日 16時30分 公開
[Alan PattersonEE Times]

小規模バイヤーの国防総省、GFでさえ「優先していない」

 ファウンドリーの生産能力の確保を巡る競争では、AppleやAMDなどの商用顧客に比べ、DoDのような小規模バイヤーの購買力は低下している。「米国に拠点を置くGlobalFoundries(GF)でさえ、DoDをあまり優先してはいない」とBurns氏は述べている。

 「GlobalFoundriesには、大量生産を求める多くの商業顧客がいる。軍用ウエハーの増加に関しては、それがどれくらい続くのかは分からない。軍用ウエハーは通常、高コスト、少量生産で、ボリュームを予測できないのだ」(Burns氏)

Hudson Instituteのシニアフェロー、Bryan Clark氏 出所:Hudson Institute Hudson Instituteのシニアフェロー、Bryan Clark氏 出所:Hudson Institute

 米国のシンクタンクであるHudson Institute(ハドソン研究所)のシニアフェローを務めるBryan Clark氏はEE Timesに、「米軍は、現在は広く利用されてはいないレガシーアーキテクチャ、すなわち古い半導体アーキテクチャに依存しており、小規模の専用バッチで生産するしかない」と語った。

 「半導体不足の状況下では、これらのファウンドリーは、家電向けや車載向けの半導体を製造する方がより多くの利益を得られる。DoDが、商用アーキテクチャを備えた最先端半導体をより多く使用して、パッケージングやソフトウェアでそれらを適応させるのであれば、米軍は商用生産の規模を活用して、半導体供給の混乱に対する脆弱性を軽減できるだろう」(Clark氏)

 米国が最近、半導体輸出規制措置を課した中国は、独自のサプライチェーン問題に直面している。米国は、中国を5G(第5世代移動通信)やAI(人工知能)などの技術分野で脅威となる「戦略的競合国」と見なしている。

 Clark氏は、「中国軍は既にかなりの割合の市販半導体を使用しているが、そうした半導体の製造は、欧米の技術に完全に依存している。そうでなければ、中国軍は日本や台湾などの潜在的敵国から半導体を購入しなければならなくなる」と述べている。

 「従って、中国軍は供給の混乱を乗り切ることはできるが、国家安全保障上の理由で発生する供給の遮断に対処する準備はできていない」

米国内では、国防総省の最先端ニーズに対応できない

 Burns氏は、「DoDは、ロシアのウクライナ侵攻で引き起こされたような需要の急増に備え、一定の製造キャパシティーを確保する必要がある」と述べている。同氏は3年前、米国議会に対して、米国政府はTSMCのような最先端ファウンドリーとの合弁事業に補助金を出し、DoD専用の半導体生産枠を確保すべきだと提案している。同氏は、「SkyWater Technology(以下、SkyWater)のような米国の小規模ファウンドリーでは、DoDの最先端半導体のニーズに対応できない」と付け加えた。

 Burns氏は、「DoDは、SkyWaterの90nmと130nmプロセスを使用している。高度なコンピューティングが必要だが、まだ獲得できていない。5nmプロセスを手掛けている「信頼できる工場(Trusted Fab)」はないのだ。そのため、FPGAを購入して、コンフィギュレーションはその情報を秘匿できる米国で行う場合が多い。しかし、どんなFPGAであっても、専用のASICの方が処理が速いため、性能面でトレードオフがある」と述べている。

 EE TimesはDoDにコメントを求めたが、返答はなかった。

 Raytheonのような兵器システムのサプライヤーは、半導体不足によって生産を拡大する能力が制限されているという。

 RaytheonのCEO(最高経営責任者)を務めるGreg Hays氏は、2022年12月7日に行われたCNBCのインタビューで、「サプライチェーンには、生産を加速させる魔法のような方法はない。リードタイムを短縮するために、当社はできる限りのことに取り組んでいる。しかし、コンポーネントは何千個もあり、当然ながら、半導体は兵器システムの重要な要素だ。当社はDoDと協力して、一部のサプライヤーに関して、他の代替メーカーを探している」と述べている。

 Lockheed Martinは、2022年10月中旬に開催した決算説明会で、「2022年の売上高は2021年とほとんど変わらない」と述べている。同社は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックとサプライチェーンの課題による影響が続いているが、2024年には成長軌道に戻ると予想している。

 RaytheonとLockheed Martinは、DoDの信頼できるサプライヤーリストに載っているが、両社が米国内でそれぞれ運営する半導体工場は老朽化している。

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