DoDは、“More than Moore”の半導体供給に関しては、Intelを頼みの綱とするだろう。このような半導体は、ムーアの法則をベースとしたさらなる微細化を必ずしも必要としない、アナログのような機能のヘテロジニアスインテグレーション(異種統合)を実現することによって、付加価値を提供できる。
技術情報サービスTechInsightsのアナリストであるDan Hutcheson氏はEE Timesの取材に応じ、「米国では、スマート兵器の備蓄が著しく減少しており、その大半がMore than Mooreソリューションに依存しているという状況にある」と述べている。
「IntelがDoDの期待に応えるためには、イスラエルのTower Semiconductor(以下、Tower)の買収計画を完了させる必要がある。Intelが完全なMore than Mooreソリューションを実現するためには、Towerの買収契約を締結しなければならないが、時間がたつにつれ、その実現の可能性は遠のいているようにみえる」(Hutcheson氏)
またIntelは、Towerのイスラエル工場も入手する必要がある。同工場は、「信頼できる工場(Trusted Fab)」として国際武器取引規則(ITAR:International Traffic in Arms Regulations)の認定を受けている。
IFSは、DoDを最大顧客として維持するための取り組みで苦戦している。Intelの広報担当者、Jason Gorss氏によると、IFSのプレジデントであるRandhir Thakur氏は、2022年11月22日に辞任しているが、次のリーダーへの移行をスムーズに進められるよう、引き続き2023年第1四半期もIFSに在任する予定だという。
半導体企業家であるBurns氏は、「Intelのような統合型デバイスメーカーが、ファウンドリーに変わることは難しい。Samsungはそれを実現することができた。TSMCは、サードパーティーの設計者にサービスを提供するため、ゼロから構築された企業だ。TSMCは、顧客に大きな追加利益を提供しているため、そこから切り替えるとなると、かなりの高コストになる」と述べる。
元米下院情報特別委員会委員長であるMike Rogers氏は、EE Timesのインタビューの中で、「DoDが、中国をはじめとするアジアの国々に依存しない安全な半導体サプライチェーンを構築するには、数年を要するだろう」と述べる。
「米国は、ハイエンド半導体を製造することが可能な独自能力を備えているが、製造可能な量は必要レベルに達していない。このため、世界中から調達することによって補完しているという状況にある。その中で最大の割合を占めているのが、中国だ。もし、スペックの範囲を超えて改造されたマイクロプロセッサや、必要な時に作動しない武器システムなどが存在していたとしたら、陸海軍人に大勢の死者が出ることになる。これは、米国を脆弱にしているといえるだろう」(Rogers氏)
またRogers氏は、「CHIPS法(正式名称:CHIPS and Science Act)は、このような脆弱性の一部を解決するために策定されたものである」と述べる。
「これは確かに欠陥のある法案だったが、それでも米国が独自の生産能力を確保しなければならないことを認識するという、正しい方向への第一歩だといえる。実際に米国産の半導体が必要となる何らかの事態が発生した場合に備え、国内におけるバランスの良い製造能力を見極めなければならない。生産量の削減や、製造の停止、遅延などを迫られるような状況に陥ってはならないため、緊張状態を緩和していく必要がある。このために、同盟諸国との力強い協業や米国自身の力によって、半導体チップの生産能力を増強するべく、膨大な資金が投じられているのだ」(Rogers氏)
Burns氏は、Micron TechnologyやTexas Instruments、TSMCに多額の資金が渡る可能性があるため、米国政府はCHIPS法による補助金520億米ドルの一部を、米国軍の半導体工場場に充てるべきだと主張している。
【翻訳:田中留美、滝本麻貴、編集:EE Times Japan】
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