Synapticsはドイツ・ニュルンベルクで開催された組み込み技術の展示会「embedded world 2023」で、スマートフォンなどにおけるスピーカーや触覚フィードバック機能を、圧電トランスデューサーで実現する新技術を発表した。
Synapticsはドイツ・ニュルンベルクで開催された組み込み技術の展示会「embedded world 2023」(2023年3月14〜16日)に出展し、スマートフォンなどにおけるスピーカーや触覚フィードバック機能を、圧電トランスデューサーで同時に実現する新技術「Synaptics Resonate」や、大型、高コントラスト比、高解像度の車載液晶ディスプレイ(LCD)を実現するローカル調光ICなどを紹介した。
Synaptics Resonateは、同社がembedded world 2023の初日にあたる2023年3月14日に発表した新技術だ。
従来、スマートフォンのオーディオや振動は、それぞれダイナミックスピーカーやリニア共振アクチュエーター(LRA)を用いて動作している。Synaptics Resonateは、この2つの機能を、ディスプレイガラスの背面に設置する圧電トランスデューサーによって置き換える。部品数の削減およびデバイスの小型/薄型化、コストや消費電力の削減などを実現するという。説明担当者は「スピーカーおよびスピーカー用の穴(グリル)なども不要になることから、デバイスの防塵(じん)性能、防水性向上も実現できる」とも述べていた。
同技術では、Synaptics独自のアンプとアルゴリズムによって圧電トランスデューサーを駆動することでディスプレイから直接、高い音圧レベル(SPL)かつ高音質のオーディオを可能にしている。厚み1mm以下といった圧電トランスデューサーが振動しディスプレイをスピーカーにすることで、スマホなどの小型デバイスでも、「従来のダイナミックスピーカーに匹敵、あるいは超える音量、音質を得られる」(説明担当者)という。
説明担当者は、「われわれの技術では、ひずみなしで高い信号レベルを維持できる。このため非常にクリーンな音響表現が可能になった。開発に2年を要したが、これは他社にはない新たな技術だ」と語っていた。なお、同技術を用いた場合、既存のスピーカーを用いた設計と比較し、電力効率は最大80%向上するという。
さらに、触感フィードバックも同じ圧電トランスデューサーで対応することで「より状況に合った、ダイナミックなハプティクス体験を実現できる」(説明担当者)。圧電トランスデューサーの性質から圧力検出も可能なため、タッチインタフェースにも応用可能だという。
同社ブースでは、2つの圧電トランスデューサーを搭載したスマホのデモ機を展示。スマホのディスプレイ全体がスピーカーになって音楽を再生する様子や、シューティングゲームにおいて、銃声に合わせてスクリーンを横切るような振動を感じられる触覚フィードバックを確認できた。
Synaptics Resonateは、「既に多くのスマホメーカーから関心が寄せられている」(説明担当者)という。同社は、スマホの他、タブレットやPC、車載ディスプレイ、テレビ、スマート家電など、あらゆる市場をターゲットにSynaptics Resonateを展開していく予定だ。説明担当者は「例えばモニターに複数の圧電トランスデューサーを入れ、ビデオ会議で音声が各個人から聞こえるようにするなど、さまざまなアプリケーションでより没入感や臨場感を高めることができるだろう」と語っていた。
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