PwC Japanグループは2023年4月3日、地政学リスクが半導体分野に与える影響の分析結果を発表するメディアセミナーを実施した。米中対立が継続した場合に起きる3つのシナリオと、それぞれで想定される半導体業界への影響を解説した。
PwC Japanグループ(以下、PwC)は2023年4月3日、メディアを対象に、地政学リスクが半導体分野に与える影響を分析した調査を報告する説明会を実施した。
説明会では、半導体業界における地政学リスクの一例として、先端半導体製造拠点である台湾を巡る米中対立を取り上げた。同社は、台湾を巡る米中対立の今後の展開として、「1:米国による対中先端半導体規制が継続」「2:米国による対中規制が強化」「3:中国による台湾軍事侵攻」の3つのシナリオを説明。中でも、「米国による対中先端半導体規制が継続」の蓋然性が最も高く、現実的だと結論付けた。
中国は、自国で先端チップの製造(前工程)ノウハウを有していないため、台湾ファウンドリーに依存している。現状打破のため、2014年にテクノロジー基金「ビッグファンド」を設立し、台湾ファウンドリーの買収を試みるも失敗。台湾軍事侵攻による武力制圧の可能性も考えられる。米国は、台湾に補助金を提供し、米国内へ5nmプロセスノード以下の先端半導体工場を誘致している。各国の半導体メーカーも、経済合理性を追求した結果、ファブレス化し、製造工程において台湾ファウンドリーへの依存を強めているなど、台湾の重要性がますます増している。
米国による対中先端半導体規制が継続された場合、中国は、台湾先端ファウンドリーへのアクセスが困難になる。一方で、車載チップなどの中国で製造されるグローバルサプライチェーンは、おおむね維持される。
グローバルサプライチェーンでは、企画/設計分野では中国向けライセンスの売上高が20〜30%減少。前工程/後工程では、すぐに中国向け売り上げが低下することはないものの、中国の内製化の進展により、中期的には売り上げが漸減するリスクがある。分野別では、企画/設計は中国向け売り上げの大半が消失。前工程では、成膜/エッチングや露光、プローブ検査などの分野で、高額な先端製品向けに影響が出る。
米国による対中規制が強化された場合、中国は、半導体製造が台湾を中心としたグローバルサプライチェーンから分断され、中国国内で危機的な半導体不足が発生する。
グローバルサプライチェーンでは、全ての工程で主要企業の大幅な業績悪化や経営破綻が相次ぐと予想される。特に、台湾ファウンドリー(前工程)は、過半を占める中国向けが完全に消失。稼働率が低下し、経営破綻する可能性が高い。後工程や企画/設計も同様で、各工程での業績悪化の影響も派生し、経営が立ち行かなくなる可能性があると予想される。中規模以下の専業装置メーカーは、特に影響が顕著に表れるだろう。
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