東北大学と信州大学、岡山大学、大阪大学などの学際的研究チームは、リチウム空気電池の長寿命化を可能にする、新たなカーボン正極材料を発見した。
東北大学と信州大学、岡山大学、大阪大学、スロバキア科学アカデミー、University of Natural Resources and Life Sciences(オーストリア)、上海科技大学(中国)の学際的研究チームは2023年4月、リチウム空気電池の長寿命化を可能にする、新たなカーボン正極材料を発見したと発表した。
リチウム空気電池は、一般的なリチウムイオン電池に比べエネルギー密度が数倍以上となるため、次世代蓄電池として注目されている。一方で「充放電を繰り返し行えない」などの課題があった。その主な要因は、「カーボン正極材料の劣化」「リチウム負極の劣化」そして「電解液の劣化」と言われている。この中で今回は、「カーボン正極材料の劣化」を克服できる材料の開発に取り組んだ。
リチウム空気電池は、正極にカーボン材料、負極にリチウム金属を用いる。過酸化リチウム(Li2O2)が、正極で析出と分解を繰り返すことにより充放電が行われる。カーボン正極材料としてはこれまで、カーボンブラックやカーボンナノチューブ(CNT)、活性炭などが用いられてきた。
しかし、Li2O2が酸化剤として正極を劣化させるため、充放電を繰り返し行うことができなかったという。これらの課題を解決するには、正極に酸化耐性の高いカーボン材料を用いることや、正極の電位を下げる必要があった。
そこで研究グループは今回、東北大学が開発したカーボン新素材の「グラフェンメソスポンジ(GMS)」を正極に用いた。GMSは、約7nmの泡状ナノ細孔を大量に持ち、リチウム空気電池の正極として、6700mAh/gという容量を達成している。従来のカーボン正極の容量(2000〜5000mAh/g)をはるかに上回る値である。
また、耐久性についても、CNTやカーボンブラックを上回っていることが分かった。GMSは、合成過程で1800℃の熱処理を行う。これによって、エッジサイトを潰しているためだ。この時に形成されるトポロジー欠陥によって、正極の充電電位を下げることもできた。GMSを正極に用いることで、従来のカーボン正極に比べ6倍以上の充放電サイクル寿命を可能にした。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.