生成AIの世界的ブームの波に乗り、NVIDIAの時価総額は1兆ドルを突破した。同社CEO、Jensen Huang氏は2023年5月、「COMPUTEX TAIPEI 2023」の基調講演で登壇し、生成AIの持つ可能性や、その基盤として必要となる最新製品について語った。
NVIDIAのCEO(最高経営責任者)を務めるJensen Huang氏は時の人となっている。同氏の“スーパースター”ぶりは、2023年5月に台湾で開催されたコンピュータ関連の展示会「COMPUTEX TAIPEI 2023」のオープニング基調講演に顕著に反映されていた。同氏はほぼ2時間立ったままで、約3500人の観客に直接語りかけた。
同氏のメッセージは明確だった。AI(人工知能)、特に生成AIは大きな目玉となる技術で、ほぼ全ての業界が、その恩恵を受ける可能性があるということだ。NVIDIAは、生成AIが機能するために必要な、基盤となるハードウェアとソフトウェアを提供できる立場であり、AIへの関心が高まる中、同社の時価総額は1兆米ドルを突破した。
Huang氏は、持続可能性の観点も明確に打ち出した。同氏は、GPUがAIのあらゆる大規模言語モデル(LLM)を、CPUよりも低コストかつ省電力で実行しながら、いかに高い性能を提供するかを観客に訴えた。Huang氏は、「例えば、1000万米ドルで48台のGPUサーバを購入すると、44のLLMの実行に3.2GWh(ワット時)を消費するが、同じ金額で960台のCPUサーバを購入すると、たった1つのLLMを実行するのに11GWhを消費する」と述べた。
Huang氏は講演の中で、さまざまな方法やパラメータを用いてこの点を繰り返し強調した。同氏は、「データセンターの方式は非常に複雑なため、重要なのは、大規模なコンピュータではなく高密度のコンピュータを構築することだ」と述べた。また、より多くのGPUを購入することでコストと電力を節約できることを示した数値を引用し、「GPUを買えば買うほど、節約できる」とジョーク交じりに語った。
Steve Jobs氏が携帯電話革命の象徴的なCEOだったとすれば、Jensen Huang氏はAI革命の象徴的なCEOといえるかもしれない。Huang氏のスピーチには、「当社はAIのフロンティアを拡大している」や「全てのデータセンターに生成AIを導入したい」といったフレーズが散見された。
同氏は、「高速化されたコンピューティングとAIは、コンピューティングの再発明だといえる。高速コンピューティングとAIは、世界中のほぼ全てのコンピューティング企業とクラウド企業に採用されており、私たちは今、新しいコンピューティング時代の転換点にいる」と主張した。
Huang氏によると、2022年だけでも、大企業4万社とスタートアップ1万5000社がNVIDIAの技術を採用しており、「CUDA」ソフトウェアのダウンロード数は2500万件に達しているという。
基調講演では、新しいAIスーパーコンピュータやモジュール式リファレンスアーキテクチャ、ネットワークファブリック、デジタルスマートファクトリー、自律移動ロボティクス(AMR)など、多くの情報が紹介された。
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