「CHIPS and Science Act(CHIPS法)」をきっかけに、各国が自国の半導体産業強化に向け数十億米ドル規模の補助金を投じる、世界的な競争が始まった。こうした現象について、情報通のオブザーバーらが論争を交わしている。彼らが共通して促すのが、各国の "半導体法"に起因する協調だ。
2022年に米国で「CHIPS and Science Act(CHIPS法)」が成立したことがきっかけとなり、各国が自国のコンピュータチップ産業の強化に向け、数十億米ドル規模の補助金を投じる世界的な競争が始まった。こうした現象について、情報通のオブザーバーらが論争を交わしている。
中には批判的な意見もあるが、彼らは共通して、おそらく二度と無いようなこのチャンスを逃さず適切に生かせるように、各国の "半導体法"に起因する協調を促している。
imecのCEO(最高経営責任者)であるLuc van den Hove氏は米国EE Timesに対し、「"半導体法"は相互に補強、補完し合い、半導体業界のイノベーションを加速するためにこれまでにないクリティカルマス(製品の普及が爆発的に跳ね上がる分岐点)をもたらすと確信している。各地域での取り組みが重複し、また、孤立したものになった場合、結果は平凡なものとなり、貴重な時間とリソースが失われることになる」と語った。
imecはInteruniversity Microelectronics Centreの略称で、ベルギーを拠点とするナノエレクトロニクスとデジタル技術の中立的な研究およびイノベーションの拠点だ。imecは2022年12月に、コラボレーションのモデルとして、日本の新興半導体企業Rapidusと提携する協力協定を結んだ。
2022年8月に設立されたRapidusは、それ自体がコラボレーションの一例となっている。同社は、デンソー、キオクシア、三菱UFJ銀行、NEC、NTT、ソフトバンク、ソニーグループ、トヨタ自動車の日本の大手企業8社が出資している。
imecは、「日本の半導体企業は2020年代の後半にかけて、最先端の2nm世代の技術を適用したチップを量産する計画だ」とコメントしている。こうした高度なチップは、5G(第5世代移動通信)や量子コンピューティング、データセンター、自動運転車、デジタルスマートシティーに活用できる。
米国タフツ大学の教授で『Chip War: The Fight for the World's Most Critical Technology(半導体戦争:世界最重要テクノロジーをめぐる国家間の攻防)』の著者であるChris Miller氏にとって、imecとRapidusの戦略的パートナーシップは、想定したコラボレーションの一つだという。しかし、「注視すべきことは他にもある」と同氏は言う。
Miller氏はEE Timesに対して、「半導体産業を強化する取り組みに関して言えば、台湾や欧州(の組織や国々)、日本、米国などの国/地域が協力し合っていることに感銘を受けている。インセンティブファンドが相互に競争する一定の方法はあるが、業界と政府も、企業間や特に研究開発プロセスでのコラボレーションの支援に向けて新たな資金を活用した大規模な取り組みを進行中だ」と語った。
同氏は、「さらに重要なことは、米国と日本、EUなどを含む全ての主要政府が、半導体生産における独立は不可能であり、サプライチェーンの回復力と技術的リーダーシップはより深遠なコラボレーションによって最もサポートされるとの認識を示していることだ」と述べている。
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